「勉強したのに思い出せない!」みたいなことはよくあることだと思います。
私も、今朝やったことを忘れていたりとか、ひどいものです。
2020年ネイチャーに出てた研究(ソース)は、「どうして学んだことを覚えてる人と覚えてない人がいるのか?」という問題を掘り下げていています。
研究者によれば、
” 毎日の生活のなかで、誰もが「知っているはずなのに思い出せない」というフラストレーションを感じる場面はある。
しかし幸いなことに、近年の科学では、個人が特定のものごとを記憶できるかどうかをチェックできるようになってきた。”
ということで、覚えたことをすぐ忘れてしまう問題を定量的に調査しました。
これはスタンフォード大学の研究チームによる実験で、18歳から26歳までの男女80人を集めて、
以前に聞いたことのある状況を思い出してもらう
いろんなものが映った映像を記憶して、どこまで覚えているかを調べる
というタスクを行うように指示しました。
そのあいだにEEG(脳波図)で脳の活動を測定しつつ目の動きなども観察して、注意力の変化をチェックしたそうです。
この2点を調べたのは、
” 頭の後部から出るアルファ波の増加は、注意力の低下、マインド ワンダリング(物思い)、注意散漫などの状態に関連している。
また、瞳孔径の収縮も、マインドワンダリングの増加や、認知パフォーマンスの低下と関係がある。”
ということが昔から言われてたからです。
もちろんマインドワンダリングは良いアイデアを生むときに欠かせない脳の状態ですけど、注意してものごとを記憶したいときには逆効果になるということですね。
さらに全員に「普段からどれぐらい注意力がそれるか?」や「マルチタスクをどれぐらい行なっているか?」などを尋ねるアンケートを行い、すべてのデータをまとめて分析したところ、
- 「普段からいろんなメディアを同時に見てます」と答えたグループは、瞳孔サイズが縮んだ(これは注意力が散漫になっている証拠)
- 物事を記憶する前に注意が散漫になった場合は、すでに見た映像を忘れてしまう確率も高かった
という傾向が見られました。
勉強したことをすぐに覚える人とそうでない人がいるのは、
- その人がどれぐらいマルチタスクで作業をしているか?
- 普段からどれぐらいマインドワンダリングを起こしているか?
といった要因に左右されるんじゃないのかということです。
「マルチタスクは良くない」「ひとつの作業から別の作業に移っただけでもパフォーマンスは低下する」ということはこのブログでも書いてますが、マルチタスクしていると、一気にパフォーマンスが下がることは良く知られています。
この悪影響はあくまでマルチタスクをしているあいだにだけ起きるものだって考えられていましたが、今回の調査では「普段からマルチタスクが多い人は、脳が常に機能の低下を起こしてるのかも?」とも考えられるので、普段からマルチタスクをしている人は注意が必要かもしれません。
ですが、この結果はあくまで相関関係でしかないので、研究チームも、
” メディアのマルチタスクをすることで、持続的注意力と記憶力が低下するとは言えない”
などと注意をうながしています。
ですが、注意のコントロールが学習と記憶に欠かせないのは明らかなので、普段からマルチタスク作業はしないのが一番だと思います。