メンタルの病と幼少期のトラウマの脳への悪影響とは?

メンタルの病で脳は大きくなるのか小さくなるのか

心理的な負担が脳に悪いのは良く知られていますが(ソース)、2020年に出た研究(ソース)では、具体的にどれぐらい脳のサイズに影響するのかを調べています。

これは合計112件のデータを精査したメタ分析で、健康な成人4911人とうつ病と診断された5934人を比べて、メンタルと脳サイズの関係について精度が高めの結論がでています。

その結果は、

  • うつ病のみで他の合併症には悩んでいない人は、海馬の大きさが6.8%減少していた(海馬は記憶力や認知能力にも関わる脳のエリア)
  • 遅発性うつ病患者と複数回のうつ病エピソードを持つ患者ほど、脳の大きさが小さくなる傾向があった
  • うつ病と不安障害を同時に患っていた人では、扁桃体の体積が逆に大きかった(扁桃体は感情のコントロールに関わるエリア)。このような人の扁桃体の体積は、健康な成人に比べて平均3.6%も大きかった

だったそうです。

うつ病だけだと脳のサイズが縮み、ここに不安障害が加わると扁桃体が大きくなる傾向があるようです。

不安ぎみな人は常に警戒心を抱いてるせいで脳の感情エリアがいつも活動しており、結果として扁桃体が大きくなるのかもしれません。

研究チームによれば、

” 海馬のサイズ縮小はアルツハイマー病の危険因子であり、認知症の発症を加速させる可能性がある。この関係性は人生の後半でさらに強くなる。

ただし、うつ病は脳に多くの影響をおよぼすが、うつ病と不安が一緒になると、不安がその影響を覆い隠してしまうようだ。なぜそのようなことが起こるのか、正確にはわからない。”

ということです。

とにかくメンタルの状態で脳サイズに違いが出るのは間違いなさそうですね。

幼少期の辛い体験が細胞レベルで人間を老けさせる

虐待や暴力を受けた子供は老化が早くなる」という辛いデータ(ソース)があります。

これは「脳とトラウマ」に関する先行研究から54件を抜き出し、11万6010人分のデータをまとめたものです。

その結果、幼少期に辛い体験をした人たちには以下のような傾向が見られたそうです。

  • 思春期に入るスピードが速い
  • 細胞レベルで老化が加速する
  • 大脳皮質の厚みが小さくなる(社会的、感情的な処理に重要なエリア)
  • 特に幼少期の暴力やトラウマは大脳皮質を小さくする
  • 幼少期の貧困やネグレクトなどは認知と感覚の処理を司るエリアのサイズ減少と相関していた

研究者によれば、

” 幼少期の逆境は、人生の後半における健康レベルを予測する強力な因子だ。

ここには、うつ病や不安のような精神の健康だけでなく、心血管疾患、糖尿病、癌のような肉体的な健康もふくまれる。

今回の研究は、暴力の体験は、肉体の生物学的な老化スピードをアップさせる可能性を示している。”

とのことです。かなり辛い結果です。

現時点では、これらのネガティブな影響を心理療法で解決できるかは分かってませんが、とりあえず幼少期の傷はできるだけ早いうちにやわらげといた方が良さそうです。

脳の機能を劣化させるホモシステインとは?

ホモシステインの増加で脳が劣化する

ホモシステインは、体内でタンパク質が使われた後に出る残りカスみたいなものです。

かなり酸化しやすい性質を持っていて、これが増えると体内のAGEsレベルが上がったり、コラーゲンの質が落ちたりと、良くない状態になります。

アンチエイジングの大敵、AGEs って何?

たいていの人は、血中のホモシステインが10 mmol/Lより下ですけど、この数値を上回っていくと危険信号で、その結果、人体に起こるのは、

  • 肌の劣化
  • 血管の老化
  • 脳の劣化

などです。まさにアンチエイジングの大敵と言えます。

シャープな脳を保つにはホモシステイン対策が必須

なかでも大きな害が実証されているのが脳へのダメージです。

いくつかのメタ分析で、ホモシステインで脳が衰える!って結果が一貫して出ていて、

  • 20431人のデータを調べたところ、総ホモシステイン値が高い人ほど脳の萎縮が認められた(2014年,ソース)
  • 19件のデータを調べたところ、総ホモシステイン値が高い人ほど脳機能が低下していた(2012年,ソース)

などとなっています。

ホモシステインが増えるほど脳が縮んで、アルツハイマーの発症リスクもはね上がっていくようです

シャープな脳を保つには、ホモシステインを低めに保つのが重要です

ホモシステインにビタミンBが効く?

では、ホモシステイン対策はどうすればいいのか?ということですが、ビタミンB群が重要とされています。

過去のデータでは、ビタミンB群が足りている人ほどホモシステイン値が低いという結果があります。

ですが、ビタミンBのサプリがホモシステインに効くかは賛否両論があります。

というのも、上で紹介したメタ分析では、いずれも「ビタミンBサプリは効かない!」という結論になっています。

ビタミンBが大事なのは間違いないものの、サプリを飲んだところでホモシステインは減らないのではないかということです。

そんなわけで、ホモシステイン対策については「バランスの取れた食事をしよう!」ぐらいのアドバイスしか言えなかったのですが、「これまでのメタ分析は間違いがあった!」というレビュー論文(ソース)が出ていて、異なる結果になっています。

ビタミンBが足りてない人にはサプリが効く

この論文のポイントは、

いままでのメタ分析は「ビタミンBが足りている人のデータ」をメインにしていた

ということです。ビタミンBが足りている人にサプリを飲ませても、変化は出にくいってことなのですね。

実際、ビタミンB不足な人を対象にした実験だけに絞ると、また違った結果が出ています。

  • 50〜70代の女性800人に1日800mugの葉酸を飲んでもらったところ、3年で総ホモシステイン値が改善した(2007年,ソース)
  • 心疾患リスクの高い女性にビタミンB12やB6を飲んでもらったところ、脳の機能に大きな改善がみられた(2008年,ソース)

ということで、確かにビタミンB不足な人には、サプリがちゃんと効果を発揮しています。

特に大事なのが葉酸・ビタミンB12・B6

2010年にオックスフォード大が行った実験(ソース)によると、軽度の認知症に悩む患者たちを対象に、参加者の半分に対して、

  • 葉酸塩 0.8mg
  • ビタミンB12 0.5mg
  • ビタミンB6 20mg

を毎日2年にわたって飲み続けてもらったところ、脳の萎縮率が30%も改善したということです。これは凄いことです。

具体的な改善の流れとしては、

  1. ビタミンBレベルが正常になる
  2. ホモシステインが減る
  3. 脳の萎縮スピードが下がる
  4. 頭が良くなる!


という感じです。

これを見る限り、ビタミンB不足な方はサプリを飲んだ方が良いと思います。

いまの日本人はビタミンB12はぎりぎりで、ビタミンB6が足りない人が多い感じ(ソース)なので、ビタミンB6は補充した方がいいかもしれません。

プロバイオティクスとビタミンDで脳機能が改善する!

腸と脳はつながっている(腸内細菌がセロトニンのような神経伝達物質を作ってくれて、これが脳に作用する)という事を以前記事にしました。

腸の健康が認知機能に影響するのではないかということで、「プロバイオティクスが高齢者の脳機能の改善に役立つか?」ということを調べた論文(ソース)が出ています。

腸で作られたセロトニンは幸福感に影響する?!

プロバイオティクスで脳機能が改善

これは12週間のRCT(ランダム化比較試験)で、65歳以上の男女63人を集めて、

  1. ビフィズス菌系プロバイオティクスを飲む
  2. プラシーボ(偽物を飲む)

のいずれかを指示しました。そのうえで、みんなの腸内フローラ、BDNF(神経の細胞の成長を促進するタンパク質)、脳機能(様々な認知テストや感情テスト)を行ったところ、

プロバイオティクスを飲んだグループは、腸内フローラの改善だけでなく、BDNFのレベルと認知機能が有意に改善した!

という結果でした。小規模なテストですし、過去には「腸内が正常な人がいくらプロバイオティクスを飲んでも無駄」(ソース)という精度の高めな報告も出てるので、普通に健康な人でも同じ働きがあるかは不明です。

が、高齢になると腸内フローラも乱れがなので、加齢とともに必要かなと思います。

ビタミンDで高齢者の認知機能が改善

高齢者の認知機能にビタミンDが効くのではないかという話は昔からあるのですが、その点を調べたデータ(ソース)があります。

これは太りぎみな58才から64才の女性42人を1年にわたって調査したRCT(ランダム化比較試験)で、みんなに健康的なライフスタイルを実践するためのカウンセリングを受けてもらったあと、

  1. 600 IU
  2. 2000 IU
  3. 4000 IU

って3つのパターンでビタミンD3を毎日飲むように指示しました。そこで定期的に脳機能のテストを行ったところ、結果は、

  • 1日あたり2000IUのビタミンDを摂取したグループは、視覚およびワーキングメモリと学習テストで最高のパフォーマンスを示した
  • 逆に、1日4000 IUのビタミンDを摂取したグループは、もっとも認知の反応スピードが遅くなっていた

ということで、やはり歳をとるとビタミンDは大事なようです。ですが、一方で取りすぎもよくないってことですね。

実際、過去のデータ(ソース)でも大量のビタミンDを飲んだ高齢者は骨折のリスクが高まったという報告もあるので、上記の実験ように2000IUぐらいが良いようです。