他人から好かれたいなら自分の弱みをさらけ出すと良いという研究結果があります。
(ソース)
これはマンハイム大学が数百人の参加者を集めて7つの実験を行なったもので、
- 参加者たちに、「好きな相手に愛を告白してる状況」「大げんかの後で恋人に謝っている様子」「職場で重大なミスを犯したことを認めている様子」などの心理的に辛い場面を思い浮かべてもらう
- 「欠点や恥ずかしさをさらけ出す行為」について、どう感じるかを報告してもらう
という感じの架空のシナリオを思い浮かべてもらい、「欠点や恥ずかしさをさらけ出す行為」をした人たちへの好感度を調べました。
その結果は6つの実験でほぼ同じで、
- たいていの人は、自分が「欠点や恥ずかしさをさらけ出す行為」をしていると想像すると、「私は弱くて無能であるように感じる」と報告しがちで
- 他の誰かがそのような行為をしていると想像した場合は、「その人は良い人間だ」と報告する傾向があった
ということで、自分の弱さをさらけだす行為には、自分と他者の認識にギャップがあるようです。
自己と他者における好感度のギャップはは昔からよく確認されていて(ソース)、
人間には「自分は他人から好かれない」と思いやすい偏見があるらしいです。
弱みをさらけ出す行為にも、同じような現象が起きるということですね。研究チームは、このような現象を「美しき困難」と呼んでいます。
「弱さ」の研究で有名なブレネー・ブラウン博士も、
” 私たちは、他人が語る生々しい真実や率直な態度を見るのが好きですが、自分がそれを行うことは怖がる傾向がある。
他人が弱さを認めた場合は「勇気がある人」だと思うのに、自分の場合はただの力不足だと思い込みます ”
といったことを言っていて、ほぼ同じような話です。
研究チームはさらに現実の場面でも実験を行ない、具体的には、
- 参加者を2つのグループにわけて、1つのグループには「これから審査員の前で即興の歌を歌ってもらいます」と指示し、もう一方のグループには「審査員を務めてくさい」と指示する
- 全員に「他人に恥ずかしい姿を見せる」ことについてどう思うかを尋ねる
という感じで「弱さ」への評価のギャップを調べたところ、やはり結論は同じで、
- 人前で歌わねばならないグループは「自分が恥ずかしがってるところを見せたら、他人に嫌な思いをさせるだろう」「自分は堂々とした姿を見せなければならない」と答えた
- 審査員を支持されたグループは「人前で歌うことができる人たちには、どんな姿を見せようが強さと勇気を感じる」と答えた
ということでした。
自己と他者への見方に大きな食い違いが確認されてます。
たいていの人は、自分の脳内で似たような想像をしただけでも、この結果と似たような感覚を得るのではないかと思います。
研究チームによれば、
” 過去の研究から見ても、自分の「弱さ」を表現することは人間関係においてとても重要なことである。
自分の弱さを出せれば信頼を築くことができるし、相手に助けを求めれば学習を促進することもでき、間違いを認めればそこには許しが生まれ、恋愛感情を告白できれば新しい関係を生み出すことができる。”
ということです。
”「弱さ」を示す行為が自分には無能の現れのように感じられたとしても、外側からは勇気の現れのように見えるケースは少なくない。
人間関係の質や健康、仕事の成果に対する「弱み」を示す行為は、実際には有益である。”
ということで、とりあえず自分の「弱み」は受け入れて、表に出しても損はないというポイントが強調されています。
しかし、ときには「弱み」を表すことが裏目に出てしまうこともありまして、1966年に行われた昔の実験(ソース)によると、
- もともと周囲から「賢い」と思われている人が失敗をした場合(新しいスーツにコーヒーをこぼしたりとか)、周囲から「好ましい人だ」と思われやすくなる
- もともと周囲から「能力が低い」と思われている人が同じ失敗をした場合、周囲から「嫌いになった」と思われやすくなる
という結果が出ていて、これは「プラットフォール効果」という現象で、有能な人が「弱み」を出すと好感度は上がるんだけど、能力があると思われてない人が「弱み」を出すと逆に嫌悪されてしまうという結果になります。
ということでこの実験からの教訓は、
- 恥ずかしいことや自分の欠点を出すと、周囲からの好感度が上がる可能性は高い
- しかし、その効果は周囲がこちらをどう思ってるかに左右されるので注意したい
ということになります。
普段から賢く行動している人ほど自分の失敗をさらけ出すことに抵抗があると思いますが、弱みを出したからと言って状況が悪くなることはなくむしろ良い方向へ向かう可能性が高いということが言えると思います。