お肉を食べると死亡率は高くなるのか?

肉はいつも悪者扱いされていますが、 「では、お肉を食べると死亡率はあがるのか?」という問題について考えてみたいと思います。

まず参考にしたいのが、ベジタリアンの寿命について調べた1999年のメタ解析(ソース)です。

5つの研究データを精査して、「肉を食べなければ長生きできるのか?」について結論を出しています。

魚は最強, 加工肉は最悪!

このメタ分析によると、ベジタリアンは動脈硬化による死亡率を20%以上ほど改善するのですが、その他の心疾患やガンなどのリスクを下げるわけではなく、全体的に見れば肉を食べるグループにくらべて長生きするわけではないという結果がでています。

ただし、ラクト・オボ・ベジタリアン(卵や乳製品は食べる)やセミ・ベジタリアン(たまに肉を食べる)、ペスクタリアン(魚は食べる)といったサブグループは、やや死亡率が下がる傾向にあります。

また、2012年のデータ(ソース)でも似たような傾向が出ていて、厳格なベジタリアンは死亡率を改善しないものの、ある程度の卵や乳製品をとった場合は9%ほど長生きするそうです。

というと、「やはり肉は寿命を縮めるのかも」ということになりそうですが、ここで問題になるのがお肉の種類です。

2014年に「肉と死亡率」の関係を調べた大規模なメタ解析が出でていますが(ソース1,ソース2)、どちらも「レッドミートの消費量と全体の死亡率には相関が無い!」という結論です。

ちなみに、レッドミートは牛肉や羊肉のような色味が赤いものを指しています。

いっぽうで、死亡率を上げるのが、加工肉です。ハムやソーセージは心臓病のリスクを42%も上げるそうです。

つまり、天然のお肉に罪はないけれど、現代技術で成型されたお肉には問題があるわけです。

では、それ以外のお肉はどうかといえば、鶏肉や豚肉、魚などには、全体的な死亡率を下げる傾向が認められております(ソース1,ソース2,ソース3)。

なかでも最強なのは魚で、ベジタリアン研究でも肉食研究でも、一貫して魚介類の消費量が多い人ほど寿命が伸びるようです。

これらのデータによれば、やはり最強の悪玉は加工肉ってことになりそうです。

タンパク質のとりすぎは細胞の老化を速める可能性あり

基本的には加工肉を避ければ大丈夫だと思いますが、ベジタリアン研究のデータを見ると、わずかですが、お肉に死亡率を高める傾向があります。

そのメカニズムは、いま有力視されてるのがmTOR(エムトール)と呼ばれる酵素の存在です。

細胞の分裂や生存を調節する重要な物質で、体内のアミノ酸が増える(タンパク質をたくさんとる)と活性化することが知られています。

活性化したmTORは、あまったアミノ酸を使うために、全身の細胞へタンパク質の合成を指示します。がんばって働き出した細胞は、いつもよりも負荷がかかりすぎて、その結果として老化のスピードを速めていってしまうわけです。

ちなみに、mTORの活性を防ぐには、肉の量を減らすほかにも、プチ断食が有効だと言われています。

以上の話をまとめると、

  • お肉を抜いても寿命は伸びない
  • ただし、タンパク質のとりすぎは細胞を老化させる可能性がある
  • とりあえず魚は最強
  • 加工肉は絶対に避けるべき

という感じです。

イタリアのサルディニアやコスタリカのニコヤ半島など、長寿者が多い地域では必ずほどほどの量のお肉を食べているので、加工肉を避けて食べ過ぎさえ注意すれば「肉で寿命が縮まる」ということにはならないと言えます。

ベジタリアンは健康的なのか?

最近ビーガンのYoutuberをよく見ているとなんか健康的な感じがしてきています。そこで、 菜食主義者はどこまで体にいいのか考えたいと思います。

ベジタリアンが健康にいいのは間違いない

「ベジタリアンって体にいいの?」って疑問は昔からあります。

イタリアの過去に行われたベジタリアンの観察研究をまとめたデータは、96件データを使った系統的レビューです。
その結論は、

ベジタリアンは一般的な食事にくらべて、

心疾患のリスクが25%減る
癌の発症リスクが8%減る
体重も少ない
コレステロール値も良好

となっています。全体的に「ベジタリアン圧勝」という内容です。

この点で、現代人の平均的な食事よりベジタリアンが体にいいのは間違いありません。

ベジタリアンは健康意識が高い?

たとえば、ちょっと想像してみただけでも、ベジタリアンがタバコを吸うとは思えないし、ヨガなどの運動もしてそうです。

その点で、統計ではベジタリアンのほうが健康意識が高くて有利になってしまいますね。

そこで参考になるのが、1996年にオックスフォード大から出た論文(ソース)です。

実験では、まず健康雑誌やサプリショップなどで募集をかけ、健康意識が高い男女だけを1万700人もピックアップしました。続いて全員を以下の2つのグループに分け、

  1. ベジタリアングループ
  2. 肉も普通に食うグループ

そのうえで、17年にわたって追跡調査を行ったところ、

  • どちらのグループも死亡率は同じ!
  • 病気の発症率も同じ!

という結果でした。これは1994年の実験(ソース)でも似たような結論が出てまして、どうも健康意識さえ高ければ、特にベジタリアンだから健康というわけでもないということです。

ベジタリアンで足りなくなりがちな栄養はある

以上のことから、

  • 野菜だけの生活が特に健康面で有利ってことはなさそう
  • 逆に言えば、肉を食べなくても、卵や乳製品、豆類のタンパク質で健康でいられる
  • 大事なのは加工食品と精製油をやめること

という感じでしょうか。

ちょっと気になるのが、ベジタリアンとメンタルの問題です。

というのも、肉や魚を食べないと脳に欠かせない栄養素が少なくなりがちで、慢性疲労やメンタルの悪化が起きるケースが意外と多いです(ソース)。

具体的には、

  • オメガ3:魚と肉に多くふくまれ、脳の働きには欠かせない成分です。亜麻仁油からとることもできますが、体内の吸収率が悪いのが難点で、ベジタリアンの場合は、乳製品で補う必要があります。
  • ビタミンB12:ベジタリアンほどビタミンB12が足りない傾向があります(ソース)。

    ビタミンB12はDNAの合成にも使われる大事な成分で、ほぼ肉からしかとれない栄養素なのでベジタリアンは不足なりがちです。

  • カルシウム:ビーガンはどうしてもカルシウムが不足しがち(ソース)です。野菜のカルシウムは体への吸収率が悪いので、どうしても少なめになってしまいます。乳製品を食べないビーガンにありがちなことです。

の3つが代表例ですが、あと人によっては鉄分とか亜鉛も不足しがちです。

とくにビタミンB12不足のダメージがよくあることなので、ベジタリアンなライフスタイルを選んだ方はサプリで補う必要があるかもしれません。

上に挙げた点にだけ注意すれば、ベジタリアンは十分に健康的なライフスタイルとしてありかと思います。

牧草牛(グラスフェッドビーフ)の方が健康的なのはなぜ?

私たちが普段口にしているのは、穀物で育てられている牛で、グレインフェッドビーフと呼ばれています。

それに対して、自然の環境で放牧されて、牧草だけで飼育された牛肉はグラスフェッドビーフ、牧草牛と呼ばれて、いわゆる「放牧牛」です。

肉・魚・乳製品の質は、動物たちの生育環境に大きく左右されるので、与えられたエサの違いによって、お肉の栄養プロファイルもかなり違ってきます。

その放牧牛のメリットについて説明していきます。

放牧牛はオメガ3とオメガ6のバランスがいい

オメガ6は脂肪酸の一種で、体内のオメガ3とオメガ6のバランスが悪くなると、肥満やアレルギーといった害が出ることが知られています。( ソース

一般的に、すべての牛肉にはオメガ6が入っていますが(ソース)、放牧牛のほうがオメガ3の量が多いという データが豊富です(ソース)。その割合は飼育環境によって違いますが、大体穀物牛の2倍から5倍と言われています。


平均的なオメガ6:オメガ3の比率で言うと、

  • 牧草牛 1.53:1
  • 穀物牛 7.65:1

という感じです。

放牧牛は善玉コレステロールを上げやすい

放牧牛にふくまれる飽和脂肪には、

  • ステアリン酸
  • パルミチン酸
  • ミリスチン酸

の3つの脂肪酸が入っています。

このなかで、放牧牛にはステアリン酸が多くふくまれていて(ソース)、HDLコレステロールを上げて、LDLコレステロールを下げる働きがあると言われています。

放牧牛は素晴らしいということですね。

脂肪を燃やす共役リノール酸が豊富

共役リノール酸は、乳製品などにふくまれる不飽和脂肪酸の一種。体脂肪を減らす効果(ソース)の高さには定評があって、ほかにも抗酸化作用や、糖尿病に効くとも言われいます。

穀物牛にくらべると、放牧牛にふくまれる共役リノール酸の量はおよそ2倍から3倍(ソース)です。牧草によって牛のPH値が変わって、共役リノール酸を生む細菌が増えるみたいです。

牛肉の共役リノール酸は市販のサプリとは違って老化を進めない(ソース)ので、積極的に食べていきたいところです。

放牧牛は抗酸化成分も豊富

その他、放牧牛はビタミンや抗酸化成分も豊富なことが知られています(ソース)。たとえば、

  • ベータカロチン
  • ビタミンA
  • ビタミンE
  • グルタチオン(肝臓の解毒と抗酸化作用がある)
  • スーパーオキシドディスムターゼ(細胞内に発生した活性酸素を分解する酵素)

などです。

かなり強力な抗酸化パワーがあるので、酸化に弱いオメガ3も腐らずにとることができるわけです。すばらしいです。

以上のように、日常的に牛肉を食べるなら、できるだけグラスフェッドビーフを選びたいですね。

さびついたタンパク質で体が老け込む!

脂質の酸化で体が老けるという話はよく聞くと思いますが、「タンパク質の酸化は人類の健康への脅威か?」 という論文(ソース)によると、脂質の酸化と同じように「タンパク質の酸化もかなり体に悪影響があるのでは?」という話です。

これは、スペインの研究者がまとめたレビュー論文で、過去に出た「タンパク質と酸化」に関する実験データを検討したものです。脂質の酸化にくらべてマイナーな話題ですが、ここ十数年でかなり研究が進んできています。

タンパク質のサビが体にダメージを

脂質の酸化を「LOX (lipid oxidation)」と呼ぶのに対して、タンパク質の酸化は「PROTOX(プロトックス)」と呼ばれています。

研究者によると、

” これまでのマウス実験によれば、プロトックスが病気を引き起こすメカニズムはまだはっきりしていない。

しかし、プロトックスが老化にともなう病気(アルツハイマーやパーキンソン病、IBD、リウマチ性関節炎、糖尿病、筋ジストロフィー、白内障など)の発生に中心的な役割を果たしているのは間違いない。”

ということです。

鉄がさびていくようにタンパク質にも酸素で変化が起こり、それが体にダメージを与えるということですね。

プロトックスで腸内にも被害が及ぶ

具体的には、

  • プロトックスの摂取量が高い人ほど、体内の酸化ストレスも上がるので、その結果、心臓がおとろえていったり、脳がぼけていったり、がんの発症につながる可能性が高い。
  • 体内に入ったプロトックスは、まずは腸内に溜め込まれていき、腸内細菌のバランスに大きなダメージを与える。そのため、プロトックスの摂取が多い人ほど大腸がんが多い。

などとなっています。

まだマウス実験が中心ですが、プロトックスで体内の酸化レベルが増えるということは確認されています。

「レッドミートで大腸がんが増える」(ソース)というデータもありますが、プロトックスの可能性も高そうです。

鶏の肉が酸化する理由

養鶏場での以下のような鶏への悪影響
食欲低下
健康状態悪化
病気
毒素の生成

さらに以下のような酸化ストレス

育成法
酸化油の使用
加熱
加工法
保存法
などで鶏肉は酸化してしまいます。

プロトックスへ対策は?

プロトックスの原因は脂質と同じく熱、光、酸素の3つです

完璧に酸化を防ぐのは不可能ですけど、それなりの対処はしておきたいところです。

食材選びのポイント
  • できればグラスフェッド(自然の環境で放牧されて、牧草だけで飼育されている)の肉を選ぶ(育成法がいいので酸化が少ない)
  • 牛>豚>鳥の順に鉄分の量が変わるので、牛を減らして鶏を増やしたほうが良い
  • 筋肉内の酸素タンクであるミオグロビンが少ないほうが酸化はしにくい。こちらも牛>豚>鳥の順にミオグロビンは少なくなる
  • 脂肪が多い肉ほどプロトックスも多くなりがちなので、低脂肪のものを選ぶ

調理と保存のポイント
  • 高熱の調理は厳禁
  • 新鮮なものをすぐ食べる
  • 加工された肉や燻製肉は避ける
  • できれば真空パックで保存

という感じです。

要は、良い鶏肉(魚ももちろん)を真空低温調理で食べるのがベストという結論になります。

昔から「鶏と魚は発ガンリスクを上げない」という傾向があって、これはやはり鉄分とミオグロビンの差も大きいのかもしれません。真空低温調理というのがちょっとハードル高いですが。