ダイエットの観点から、「糖質は減らすほどよい」という意見がある一方、「糖質を取らないと健康に悪い」という主張もあったりします。
2018年に「炭水化物はどれぐらい食べるのが健康なのか?」という問題について、かなり良い研究データ(ソース)が出ていたので、参考になるかと思います。
これは2種類の分析で構成された研究で、
- 4つの地域で募集した45歳から64歳のアメリカ人男女1万5428人を対象にした追跡調査を実施。みんなの食事を定期的に調べて、中央値で25年間の調査を行う。
- 世界各地から43万人以上のデータを集めて、メタ分析を行う。
みたいになってます。
あくまで観察研究ですが、規模は大きいし、異なる民族の男女を含んでいるし、逆の因果関係があるかどうかも確認しているいるので、かなり質が高い結論を出しているのではないかと思います。
分析の結果は以下のようになっています。
- 約1万5000人のアメリカ人を25年ほど追いかけた結果、炭水化物を食べる割合と死亡率の間にはU字型の関連があり、炭水化物を食べる量が総カロリーの50〜55%の場合に、死亡リスクが最も低くなることがわかった(平均48.9%)。
- メタ分析でも同じような結果が出ていて、炭水化物をあまり食べない人(40%未満)と、炭水化物をたくさん食べる人摂取(70%以上)のどちらとも、ほどほどの炭水化物量と比べて死亡リスクが高かった(ハザード比:低摂取:1.20、高摂取:1.23)。
- 炭水化物をあまり食べない人たちの平均寿命は79歳で、炭水化物をたくさん食べる人たちは82歳、ほどほどの炭水化物を食べる人たちは83歳だった。
ということから、現時点で最良のデータを見る限り、炭水化物は食べすぎても食べなさすぎても問題がありそうですね。
糖質制限ダイエットとか短期的にはいいのかもですが、やっぱ長期で見ると難しいのかもしれません。
1日2000kcalを食べる人がいた場合、炭水化物からのカロリーが30%の食事は1日150gに相当し、そのうち糖類は50g程度に相当しますから、これぐらいだと、相対的に野菜の摂取量が減るのは避けられず、 食物繊維の摂取量が減ってしまうのも当然でしょう。
そのせいで便秘は起きやすくなるだろうし、血中コレステロール値も低下するだろうし、腸内細菌にもダメージがあるだろうしで、死亡リスクが増えても仕方ない感じです。
ほかにもこの調査には注目すべきポイントがあり、
- 炭水化物と死亡リスクの関係は、「どの食品から摂取するか?」によって異なっていた。基本的には、炭水化物を動物由来の脂肪またはタンパク質源(ラム、牛、豚、鶏など)に置き換えると、死亡率が高くなることが分かった。
- 一方で、炭水化物を野菜やナッツ、豆類などの植物性タンパク質に置き換えた場合は、寿命が短くなるどころか長くなった。
みたいになってます。
こうして見ると、低糖質ダイエットをするにしても、ブロッコリーや豆腐みたいな植物性のタンパク源を増やすなら問題はなさそうです。
コーネル大学のチャールズ・マコーミック准教授によれば、
” 極端な食事は危険をともなう。
私はこの研究の効果の大きさに驚いた。加工肉や赤身の肉の摂取を減らすと、心臓病による死亡率が低下するという考えは、現在のところ多くの支持を集めている。
つまり、加工されていない炭水化物の適度な消費は、最も良い解決策である可能性が高い。
加工されていない野菜をたくさん摂ることのメリットに反論できる証拠を提示できる人はいない。”
とのことです。
「なにごともほどほどに」というのは、何事にも当てはまる法則ですけど、炭水化物の問題についても同じことが言えそうですね。
さらに、研究チームによれば、
”炭水化物をタンパク質や脂肪に置き換える低炭水化物ダイエットは、健康や減量の方法として広く人気を集めている。
しかし、我々のデータは、動物由来の低炭水化物ダイエットは、全体的な寿命の短縮と関連している可能性があり、控えるべきであることを示唆している。
低炭水化物ダイエットを選択するのであれば、炭水化物をより多くの植物性脂肪やタンパク質に置き換えることが、長期的に健康な老化を促進するかもしれない。”
いうことで、糖質制限というと、つい「肉は食べ放題だ」とか「肉は食べても太らない」みたいな話に向かいがちなのですが、どうやらこれは死亡リスク増加につながってしまうので注意が必要です。