マスコミのネガティブな影響力に大衆は従う?

人間は皆がしていることに無意識に従ってしまったり、皆がしていることは正しいと思い込んでしまう傾向があります。

ロバート・チャルディーニの「影響力の武器」によると、例えば、地元の新聞で黒人が白人に暴行されたというニュースが出ると、その新聞が配布された地域だけで黒人が白人に暴行される事件が増えてしまうという結果があります。

マスコミで報道があると、皆がそれをしていると大衆は無意識に感じてしまいます。

無意識にその行動をしやすくなってしまうということです。

「影響力の武器」に書かれてあることですが、例えば、自殺や殺人事件のニュースが新聞で報道されると、その人間の死を連想させるニュース記事の面積に比例して、飛行機の事故率や車の事故率が上がってしまうという調査結果もあります。

普段の生活でも、誰かが混んでる渋滞の中路肩を走って出口へ向かうと次々と後続車が出てきたりして、つい皆の行動と同じをとってしまいがちです。

ネガティブな情報の伝え方

テレビや新聞でのニュースは、皆がそうしているという考え方をさせる力が大きいので、大衆は従ってしまう傾向にあります。

例えば、有名人が自殺したというニュースが報道されると、そのニュースが報道された地域やそれを見聞きした人たちの中で自殺率が上がってしまうことです。

では、ネガティブな情報はどう報道すればいいのでしょうか。

ネガティブなニュースを伝える時には、そんな経験をしている人の中にも頑張っている人がいて、立ち直っている人もいるというプラスな情報を必ず付け加えるだけで、そのネガティブな情報から受ける影響力を変えられます。

例えば、恐ろしい殺人事件が起きたとしたら、その事件に対してなんて悲惨な出来事ですということでニュースを終わらせるのではなく、それは酷い事件だと伝えた後に、過去に起きた同様の事件や事故に巻き込まれた人が、今は立ち直って強く生きているという事例もあるということを付け加えるだけでいいのです。

そうすると、辛い事件や事故もあるけれど、そんな状況に追い込まれても頑張っている人もいるから自分たちも頑張らないといけないというポジティブな方向に多くの人たちをコントロールすることができるので、ネガティブなニュースの影響力が和らぐのです。

女性差別の報道でも同じ現象があります。

男女格差の問題についても同じような研究があり、(ソース
女性がセクハラやパワハラを受けているということを報道するだけでは逆に差別意識が大きくなってしまうということが分かっています。

残念な結果です。

これはセントルイス大学の研究で、被験者を2つのグループに分けて、一つのグループには女性差別は多く行われていると報道されているけれど実際には珍しいケースだということを伝え、もう一方のグループには女性差別は広く起きている問題で多くの企業で一般的に起きているということを伝えました。

その後に、全員に対して女性にどのような認識を持つのかということを調べまたところ、

女性差別が一般的に行われているということを伝えられたグループの方が、女性は仕事に向いていないと答える確率が上がったということです。

つまり、女性差別がより加速してしまっていたわけです。

この論文では、経営者を対象にした実験も行われていて、経営者もやはり同じような傾向が確認されています。

女性差別が多くの企業で問題になっているということを伝えられたグループの方が、女性差別が珍しいケースだと伝えられたグループよりも、女性に対する評価が一様に厳しくなっていたということです。

しかも、この経営者に関しては、女性差別が多くの企業で横行していると伝えられた経営者は、その後のアンケートで、女性を採用したくないと答える確率がなんと28%もアップしていたということです。

経営者のように自分は自分の意思で判断していると考えている人でも、人間はみんな無意識のうちに大勢の意見に従ってしまう傾向があるからです。

女性差別が起きていて多くの企業で問題になっている中でも、多くの女性は女性差別という偏見を克服し様々な活動をしたり、その偏見を乗り越えて社会的に成功したりしているとか、男性優位になっている業界の中でも活躍している女性がいるという情報を付け加えるだけで、

先ほどの経営者の実験でいうと、女性を採用したいと答える確率が28%逆にアップしたということです。

つまりどんなネガティブな情報でも最後にポジティブな部分を付け加えるだけでプラスの影響力がでるのです。

誰かの行動を正しい方向に変えたいときには?

学生がお酒を飲みすぎるという問題を解決するための実験(ソース)でも、最近学生がお酒を飲みすぎたために起きた事故が増えていると注意するよりも、

優秀な学生ほどお酒を飲んでいないということがわかったと伝えた方が、学生がお酒を飲み過ぎる問題を解決する成功率が上がったという結果が確認されています。

もし誰かを説得したいと考える時には、大勢の人がそうしているということを伝えるだけでなく、最近増えてきている問題を正すためには、「実際には、それを乗り越えようと頑張っている人たちもいるし、その問題を乗り越えて成功している人たちもたくさんいる」ということを伝えることが重要です。

人間は皆がしていることは正義だと無意識に考えてしまいます。それが悪いことであっても皆がすることになるといいんだとなってしまいます。怖いですね。この傾向を利用されるとマスコミにコントロールされてしまいそうです。

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