「努力は必ず報われる!」というフレーズがありますが、2015年に出た心理学の論文(ソース)では「環境を受け入れるほうが大事である」という結論になってて、努力だけじゃないということが分かります。
これはジョンズ・ホプキンス大学の研究で、500人の参加者にアンケートを行って以下の2つの要素を調べました。
- 人生に対してどれだけ幸福感を持っているか?
- 普段は「一次的コントロール」と「二次的コントロール」のどちらを使うことが多いか?
「一次的コントロール」と「二次的コントロール」とは社会心理学の用語で、
- 一次的コントロール:困ったことがあったら環境を変えようとするタイプ。欧米人に多い。
- 二次的コントロール:困ったことがあったら自分の認識を変えて環境に適応しようとするタイプ。アジア人に多い。
といったことです。
たとえば、「痩せたい」と思ったときにカロリー制限や運動にはげむのが一次的コントロールで、「少し体脂肪が増えたけど、見た目的には大丈夫」と考えるのが二次的コントロールです。
欧米では一次的コントロールが主流で、今までの心理実験でも「ニ次的コントロールはまさに二次的では?」って意見が多いようです。
ところが今回の実験では、
- 一次的コントロールも二次的コントロールも、どちらも幸福感を増すために役に立つ
- ただし、一次的コントロールは不幸感をアップさせることが多い
- 二次的コントロールにはマイナス面がない
という結論でした。
どちらの方法でも幸福感は改善するけれど、一次的コントロールにはマイナス面もあるので、そのぶん二次的コントロールのほうが有利なわけです。
研究者によれば、
” フランク・シナトラの「マイ・ウェイ」という歌では、ある男が自分の人生を振り返り、「いつも良いことばかりではなかったけれど、それでも総じて満足できる人生だった」と述懐する。”
これが、良質で満足な人生を送るためのコツである。決して人生のマイナス面から目をそむけるのではなく、ネガティブな体験を再評価するのだ。”
” 人生の幸福感を得るために、一次的コントロールだけを強調するのでなく、周囲の環境に適応していくのも重要なことである。
仕事でも人生でも、自分でコントロールできない状況は多い。しかし、自分の反応ならコントロールできる。”
ということです。
つまり、二次的コントロールは別に後ろ向きな行為ではなく、ネガティブな体験をより広い視点から見直す積極的な方法なのだということですね。
さらに、
” 部下の行動にイライラする上司や、嫌な同僚のせいでストレスをためこむサラリーマンは、どちらも他人の行動を変えようと願っている。
しかし、二次的コントロールには問題を広い視点から見直す効果があり、他人の立場を受け入れられれば、衝突の解決にも結びつくかもしれない。
少なくとも、部下や同僚に対してもっと生産的な態度を取れるようになるかもしれない。”
とも言っています。
これは認知行動療法の症例でも聞く話で、たとえば、異常に怒る上司のせいでうつ状態になってた看護士さんが、「これはモラハラだから自分が悪いわけじゃない」と認知を変えたら、相手に対して毅然とした態度を取れることができ、結果として怒鳴られるケースが減ったということがあります。
ですが、これは一次的コントロールが悪いという話ではなくて、一次的コントロールのデメリットを理解したうえで、自分でコントロールできない状況では二次的コントロールを使ったら良いということです。