2017年のデータによると、「専門家の見解は束になった素人の意見に負ける」という結果が(ソース)が出ていて面白いです。
これはロンドン大学の実験で、146人の男女を対象にしています。平均年齢は31才で、学校で基本的な確率や統計を学んだ人だけを選んでいます。
具体的には、まずは全員に5つの社会問題について考えてもらいました。
たとえば、「町の中に車が通っていけないエリアを作るべきか?」とか「車禁止エリアを作ると町内の経済は潤うか?」とかいったようなことです。
さらに、それぞれの社会問題には、
- 専門家の意見(過去の正解率80%)
- 専門家に反対する一般人の意見(過去の正解率51%)
がついてるのがポイントです。
すべての参加者には、専門家と一般人が過去に出した正解率も合わせて伝えてあります。
そのうえで、みんなに「専門家と一般人のどっちが正しいと思う?」と聞いたうえで、ベイズの定理(条件付き確率に関して成り立つ定理)から導きだした確率モデルと照らし合わせました。
というと、誰もが「専門家の意見を信じるのでは?」と思われますが、実際は違っていました。
素人が束になれば専門家に勝てる
ベイズ推定と参加者の回答の結果は、参加者が耳にした意見の数によって支持の比率は大きく変わる、というものでした。
具体的には、
- 専門家と一般的の意見の数が1:1のときは、みんな専門家を信じる
- 専門家の正解率が80%で一般人の正解率が51%だった場合、両者の比率が1:40になったときに、みんな一般人のほうを信じるようになった
- 専門家の正解率が80%で一般人の正解率が55〜60%だった場合、両者の比率が1:10になったときに、みんな一般人のほうを信じるようになった
みたいな感じです。
つまり、かなりまともな専門家の意見でも、正解率が51%の素人が40人も集まれば負けてしまうということです。
さらに、ちょっと詳しい素人の場合は、10人もいれば簡単に専門家に勝ててしまうのです。
うそもくり返せば真実になる?
研究者によれば、
” 多くの人々は、特定の問題に対して「どれだけの数の素人が支持している時に、自分はその意見を支持するか?」という予測に対して敏感だ。”
とのことです。
多くの人は、「みんなが言ってるんだから間違いないだろう」と反射的に自分が思ってしまう数字をかなり正確に予測できたらしい。
人間には「自分が周囲にどれだけ流されやすいか」を直感的に感じるセンサーが備わってるのかもしれません。
もっとも、これはあくまで確率の話なので、現実的にこの推定と同じ数字が出るかはわかりません。
過去のデータでは、たいていの人は大多数の意見に左右されてしまうという傾向が出てるので、おそらく正しいと思われます。
つまり、2分の1の確率でしか当たらない占い師でも、数百人の熱心な信者を作って布教に励ませれば、そこからゆっくりと支持者を増やしていける可能性はあるかもしれません。「うそもくり返せば真実になる」という感じですね。
ちなみにこのモデルによれば、専門家の正解率が99.99%に達しない限り、大勢の素人には勝てないそうです。
いったん神やスピリチュアルの存在を信じた人は、いかにそこから抜け出すのが難しいかってことかもしれませんね。