アメリカ大統領選でもフェイクニュースがネット上出回ってますが、にせの情報を信じている人の考えを変えるにはどうすればいいのかという点を調べた論文(ソース)が2017年に出ています。
これはイリノイ大学の研究で、1994年から2015年のあいだに出た「間違った情報を信じ込んでいる人を正す方法はあるのか?」に関する論文から質が高い 6878人分のデータをまとめたメタ分析になっていて、信頼性は結構高めです。
思い込みを完全に修正するのはほぼ不可能
多くの実験では、
- 参加者にあえて間違った情報を読ませる(「オバマの医療改革は老人を殺す陰謀だ」など)
- そのうえで、参加者に新しい情報を伝えたり、感情に訴えてニセ情報を信じないようお願いしたりと、いろいろ試す
という手順で「他人の思い込みを解く方法」について調べています。
その結果、わかったことは、
” 誤情報の影響は非常に強い。一般的に、ある程度の思い込みを正すことはできるが、完全に修正するのはほぼ不可能だ。”
ということでかなりの負けムードです。
いったんフェイクニュースを信じ込んでしまうと、もはや逆洗脳をかけるのは絶望的ぽいらしいです。
確かに、いったん代替医療(専門医ではない個人によって行われる治療療法)を信じている人に代替医療は効かないよって信じてもらえるもらうはほぼ無理ですから。
思い込みをどうにか修正する3つの技法
ただし「かろうじて効果が見られた」手法もあって、研究チームは以下の3つにまとめています。
1.相手を説得するときは、にせ情報の細部をくり返してはいけない。
つまり「ホメオパシーは100倍の希釈を30回もくり返すでしょう?そんなに薄めたら原子すら残らなくなるでしょ?」という説明では納得してもらえないということです。
これをやると「相手の心はより頑なになり、新しい情報を受け入れる気持ちが消えてしまう」とのことです。
2.新しい情報の細部を伝えるのは効果がある。
つまり「ホメオパシーの試験はRCTが一件もなくて、効果があると結論づけた有名な論文も、実は研究者のバイアスがあったことがわかってるのよ」みたいな説得のしかたは大丈夫ということです。
研究チームによれば、「たんに相手の思い込みを間違いだと指摘しても効果はない。できるだけ細かく新たな情報を伝えよう」とのことです。
3.とりあえずもっと調べるように促すのも効果がある。
「ホメオパシーのページは他にもいっぱいあるから、ググって出てきた情報を上から全部読んでみたらどう?」といった感じで反論の情報に触れさせる確率を上げる。
反論に何度か触れるうちに、少しずつ懐疑の芽が育っていくとのことです。
以上のように、相手の考えを変えようと思ったら、とにかく別の情報をできるだけ細かくぶつけ続けるしかないみたいです。
根気よく続ければ「受け手のメンタルモデルはアップデートされ、誤った情報が上書きされていく」ということです。