性格が音楽の好みを左右するというデータは多くあって(ソース)、ジャズ好きは好奇心が旺盛とか外向性が高い人はロック好きなど様々な説が出ています。
個人の性格が曲の好みに反映されるというのは直感的にも納得しやすい感じですね。
ということで、2020年に出たデータ(ソース)では、さらに一歩進んで「アーティストのパブリック・ペルソナがリスナーの好みに影響を与えてるのではないか?」というポイントを調べたものになっています。
パブリック・ペルソナとはアーティストが公に与える印象のことで、例えばレディ・ガガだったらアーティスティックなイメージとかいう感じです。
これはバル・イラン大学の研究で、合計8万6570人の参加者を集めて、50人の有名なアーティストやバンドの歌詞とペルソナを評価するように指示しました。
ここで評価対象になったアーティストは、
ビヨンセ
ボブ・ディラン
ブラック・サバス
エルトン・ジョン
オジー・オズボーン
ポール・マッカートニー
テイラー・スウィフト
ホイットニー・ヒューストン
コールドプレイ
デイブ・マシューズ・バンド
マルーン5
ローリング・ストーンズ
などです。
そのうえで、
- ファンから評価されたアーティストのペルソナ(そのアーティストが周囲からどう思われてるか)
- 歌詞を機械学習にかけてアーティストの性格を推測(アーティストの本当の性格とは限らない)
という2つの側面から各アーティストのペルソナを分析し、これをさらにファンたちの性格と照らし合わせました。面白い研究ですね。
結果は、
みんな「自分の性格にそっくりだ」と思えるようなアーティストを好きになっていた
ということでした。
この現象を研究チームは「音楽の自己一致効果」と呼んでいて、つまり自分のことを「エキセントリックだ」と思ってればオジー・オズボーンを好きになり、自分のことを「真面目」と思ってればコールドプレイを好きになる、みたいなことです。
人間は自分に似た人を好きになるとはよく言われることですが、これはアーティストでも同じだということですね。
この結果について研究チームによれば、
” 今回のデータは、メンタルヘルスにも応用できるだろう。
ストレスや不確実性が高まった現代のような時代に置いては、リスナーは自分と似たような性格のアーティストの音楽を求めることで、自己が理解されていると感じ、他者とのつながりを感じることができる。
この点で音楽は人々に誇りと居場所を与えることができるし、実際のところ、音楽はグループがコミュニケーションを取り、ともに活動すべきどうかを決めるための方法としても進化してきた。
社会的な分断が増えている今日の世界では、私たちの研究は、音楽が人々を一つにまとめるための共通項になり得ることを示している。”
とのことです。
音楽は、アーティストのペルソナを通していろんな人たちを結びつける作用があるし、孤独な人たちに集団への所属感を与える働きも大きいという話ですね。
また、初対面の人に好きなアーティストなどを尋ねてみると、その人のセルフイメージを理解しやすくなっていいかもしれません。
コミュニケーションを深める一手段にも使えそうな研究結果と言えますね。