脂質の酸化で体が老けるという話はよく聞くと思いますが、「タンパク質の酸化は人類の健康への脅威か?」 という論文(ソース)によると、脂質の酸化と同じように「タンパク質の酸化もかなり体に悪影響があるのでは?」という話です。
これは、スペインの研究者がまとめたレビュー論文で、過去に出た「タンパク質と酸化」に関する実験データを検討したものです。
脂質の酸化にくらべてマイナーな話題ですが、ここ十数年でかなり研究が進んできています。
タンパク質のサビが体にダメージを
脂質の酸化を「LOX (lipid oxidation)」と呼ぶのに対して、タンパク質の酸化は「PROTOX(プロトックス)」と呼ばれています。
研究者によると、
” これまでのマウス実験によれば、プロトックスが病気を引き起こすメカニズムはまだはっきりしていない。
しかし、プロトックスが老化にともなう病気(アルツハイマーやパーキンソン病、IBD、リウマチ性関節炎、糖尿病、筋ジストロフィー、白内障など)の発生に中心的な役割を果たしているのは間違いない。”
ということです。
鉄がさびていくようにタンパク質にも酸素で変化が起こり、それが体にダメージを与えるということですね。
プロトックスで腸内にも被害が及ぶ
具体的には、
- プロトックスの摂取量が高い人ほど、体内の酸化ストレスも上がるので、その結果、心臓がおとろえていったり、脳がぼけていったり、がんの発症につながる可能性が高い。
- 体内に入ったプロトックスは、まずは腸内に溜め込まれていき、腸内細菌のバランスに大きなダメージを与える。そのため、プロトックスの摂取が多い人ほど大腸がんが多い。
などとなっています。
まだマウス実験が中心ですが、プロトックスで体内の酸化レベルが増えるということは確認されています。
「レッドミートで大腸がんが増える」(ソース)というデータもありますが、プロトックスの可能性も高そうです。
鶏の肉が酸化する理由
養鶏場での以下のような鶏への悪影響
食欲低下
健康状態悪化
病気
毒素の生成
さらに以下のような酸化ストレス
育成法
酸化油の使用
加熱
加工法
保存法
などで鶏肉は酸化してしまいます。
プロトックスへ対策は?
プロトックスの原因は脂質と同じく熱、光、酸素の3つです。
完璧に酸化を防ぐのは不可能ですけど、それなりの対処はしておきたいところです。
食材選びのポイント
- できればグラスフェッド(自然の環境で放牧されて、牧草だけで飼育されている)の肉を選ぶ(育成法がいいので酸化が少ない)
- 牛>豚>鳥の順に鉄分の量が変わるので、牛を減らして鶏を増やしたほうが良い
- 筋肉内の酸素タンクであるミオグロビンが少ないほうが酸化はしにくい。こちらも牛>豚>鳥の順にミオグロビンは少なくなる
- 脂肪が多い肉ほどプロトックスも多くなりがちなので、低脂肪のものを選ぶ
調理と保存のポイント
- 高熱の調理は厳禁
- 新鮮なものをすぐ食べる
- 加工された肉や燻製肉は避ける
- できれば真空パックで保存
という感じです。
要は、良い鶏肉(魚ももちろん)を真空低温調理で食べるのがベストという結論になります。
昔から「鶏と魚は発ガンリスクを上げない」という傾向があって、これはやはり鉄分とミオグロビンの差も大きいのかもしれません。
真空低温調理というのがちょっとハードル高いですが。