「全粒粉は体にいい」という話はよく聞きます。
小麦をまるごと粉にしたのが全粒粉で、普通の精製粉にくらべて食物繊維が格段に多いので、心疾患で早死するリスクを下げると言われています。
実際、健康食としては定評がある「地中海式ダイエット」も大量の全粒粉を食べるのは有名です。
地中海式ダイエットが長生きに効くのも、全粒粉の効果では?、とも考えられてきたわけです。
ただ、この根拠は観察研究がベースなので、「たんに健康的な暮らしをしてる人は全粒粉の消費量が多いだけでは?」という疑問も残っています。
全粒粉が体にいいのではなく、健康志向の人が全粒粉を食べてるだけではないかということです。
本当に全粒粉は体にいいのか?
かなり難しい問題ですが、2017年にやっと精度の高い研究(ソース)が出て、「本当に全粒粉は体にいいのか?」というポイントを徹底的に調べてくれました。
これはケンブリッジ大学の研究で、過去に行われた実験からデザインが良い9件を選んで、1414人のデータを精査したメタ分析になっています。
参加者は、健康体の人、心疾患にかかった人、メタボや高血圧など心疾患リスクが高い人が対象になっています。
だいたいの実験は、いろんな参加者に全粒粉の食事をしてもらい、心疾患リスクが下がったかどうかをチェック(コレステロール、血圧や人生の質など)しました。
その後、平均で12週間のフォローアップが行われています。
全粒粉が体に良い証拠は見つからなかった
その結論は、
全粒粉が体に良いという証拠はなし!
ということでした。
いくら全粒粉を増やそうが、総コレステロール、悪玉コレステロール、血圧などには特に目立った影響はなかったみたいです。
うーん、衝撃的ですね。いつも普通の白いパンじゃなくて全粒粉のパンが良いって思ってましたから。
データは、
すべての結果について個人差が非常に少ない
信頼区間もほとんどゼロに近い
という傾向があるのがポイントです。
簡単に言うと、「全粒粉はどんな人にも意味がない」ということで、人によっては体にいいって可能性も限りなく低いわけです。これまた驚きです。
さらに言うと、全9件のデータのなかで2件は「全粒粉を増やしたら吐き気やガスが発生した」という報告もあります。
この研究にも欠点はあって、
- 全体的に実験と途中で止めた参加者が多い
- ひとつの実験ではパンだけを使ってたり、他では玄米やオーツ麦を使ってたりと、実験によってプロトコルがばらばら
という点は結果に影響してそうな気もします。その点ではもう少しデータがあればいいかもしれません。
ともあれ、以上のことから、
どうも全粒粉には意味がない可能性が高いが、もちろん健康に悪いわけでもない
という印象です。
白米と同じで、「別に嫌わなくてもいいけど、あえて積極的に食べる理由は見つからない」といった位置づけでしょうか。
かなり全粒粉の価値がない感じになってしまいましたね。