「新型コロナのワクチンは危ない」「ワクチンは日本人を治験してないからいやだ!」みたいな意見は、ネットなどでよく見かけます。
シンプルに副反応を嫌がるケースから、「マイクロチップが!」みたいな陰謀論を恐れるケースまで、ワクチンを怖がる理由は色々なようです。
これはどういう現象なのかなと思う人も少なくないでしょう。
新型コロナに関する反ワクチンは新しい現象なので、ちゃんとした研究があるわけではありませんが、クイーンズランド大学などの2018年の研究(ソース)は、「反ワクチン運動をする人はどんな人なのか?」という問題を調べていて参考になります。
チームの問題意識については、以下のように述べています。
” ここ数十年の間に予防接種の反対運動が強まったことで、一部の伝染病の発生率がかつてないほど上昇している。
しかし、多くの介入プログラムは、ワクチン接種に懐疑的な人々には証拠にアクセスしたり理解したりする能力がないという前提で組み立てられている。”
反ワクチンというと、「正しい知識さえ伝えれば大丈夫じゃないの?」と思いがちなのですが、実際にはそういうやり方は効果が低くて当てにならないとのことです。
この指摘は、反ワクチンな人と話をした経験があれば、飲み込みやすいところじゃないでしょうか。
アメリカ大統領選挙の不正についての話でもどこそこで不正はないってはっきり言ってるよと言っても全く信じてもらえないのと似ていますね。
そこでチームが行った調査は、
- 世界24カ国と香港から5323人の男女に協力を依頼する
- みんなに調査票を送り、全員の反ワクチン接種に対する態度を測定
- 反ワクチンの人に特有の心理を抽出する
みたいになってます。かなり幅広い地域から情報を集めていて、その点信頼できそうですね。
調査の結果は、チームは「反ワクチンには4つのモチベーションがある!」という傾向を導き出して、以下のようになっています。
モチベーション1 陰謀論的な考え方
「悪意を持った影のネットワークが、ワクチンで私たちを操ろうとしている!」みたいな世界観です。
この傾向が強い人は、「新世界秩序と呼ばれる秘密結社が世界の支配を狙っている」や「ダイアナ妃の死は事故ではなく組織的な暗殺だ」みたいな文章に賛成する確率が高かったそうです。
チームによれば、こうした考え方は科学への不信と大きく関連しているそうです。
モチベーション2 嫌悪感
反ワクチンな人の中には、シンプルに「痛いのが嫌だ!」とか「針が嫌い!」って理由を持ってる人も多いらしいです。
ただし、それを知られたくないあまりに「科学の弊害が!」ってストーリーに飛びつき、強硬な姿勢を取ってしまうらしいです。
これは意外と見分けにくいポイントかもしれないですね。
モチベーション3 リアクタンス
リアクタンスとは「目立ちたい」という理由を元に反ワクチンに走るパターンで、いわゆる逆張りで注目を集めたいタイプです。
流行に逆らいたい気持ちを自分のアイデンティティの一部にしているので、「世間のコンセンサスに懐疑的な私はクールだ!」という点から思考が動かないそうです。
モチベーション4 個人主義
「自分のことは自分で決めるのが当然だ」「政府は我々の日常生活に干渉しすぎている!」といった思考が強すぎるあまり、反ワクチンに走ってしまうパターンです。
反権力とか個人的な思考が行きすぎた結果、ワクチンを社会からの強制だと受け取ってしまうわけです。
というわけで、以上のパターンにはまっている相手には、いくら正しいデータを持ち出したところで無駄です。
ワクチンを接種しないリスクを伝え続けたところで、かえってワクチンへの抵抗感を高めてしまうだけのようです。
確かに、目立ちたいだけの人にデータを示しても無駄かもしれません。
以上の知見を含めて現実に応用するとすれば、
- まずは「反ワクチンの人はどのモチベーションに当てはまるのだろう?」と考えてみる
- そのモチベーションに適した説得の方法を探す(例えば、相手がシンプルに注射が嫌な人の場合は、「注射2本打つのと何週間も人工呼吸器が必要な状態とどちらがいい?」と聞いてみるなど)
みたいになるのではないでしょうか。しかし、パターン2以外を説得するのは難しそうです。