「物忘れ」も脳の役に立っている
「あなたが忘れっぽいのはばかだからじゃない!」という面白い論文(ソース)が2017年に出ています。
これはトロントの2つの大学によるレビュー論文で、過去に行われた「脳と記憶」に関する研究の知見をまとめたものです。
その結論をざっくり言うと、
記憶の機能とは、価値ある情報だけをキープして、より最適な決定をくだすことである!
みたいになっています。
生き延びるために必要な要素だけを覚えて、無駄な情報は忘れるのが記憶の本来の姿なんだということです。
だから細かいことを忘れるのは、良い決断には欠かせない機能だという話です。
脳は忘れるようにできている
研究者によれば、
” 近年の研究により、脳のなかには記憶の喪失をうながすためのメカニズムが備わってることがわかってきた。この機能により、大事な情報をよりわけているのだ。”
ということで、人間の脳には生まれつき「物忘れ機能」が装備されてるわけです。
この機能は、
- 記憶が保存されているシナプスの結合を弱らせる/叩き斬る
- 幹細胞から新しいニューロンを生み出して、古い記憶の回路を上書きする
となっています。
人間の脳は、かなり徹底して情報を消そうとがんばってるようです。
「物忘れ」の機能は新しい環境への適応
なぜ物忘れ機能が必要かというと、
- 環境の変化によって古びた情報を消して、新しい状況に適応する手助けをしている
- 細かい情報を消すことによって、過去の情報を「なんにでも使える一般的な情報」に変える
ということです。
たとえば、昔に作った料理を再現したいと思ったときに、
- 「香り付けにクローブを使ったな」ぐらい細かいとこまで覚えている
- 「クローブじゃないとだめ!」みたいな気持ちになる
- 柔軟な決断ができなくなる
という流れになるわけですが、
- 「なんか甘い香りのスパイスを使ったな」ぐらいの記憶しかない
- 「シナモンとかオールスパイスでいいか」という判断になる
- 柔軟な対応が可能に!
みたいなことです。
物忘れが効率的な判断を導く可能性もあるわけです。
以上のように、必ずしも物忘れが悪いというわけではないというデータに関する話でした。
ですが、「効率化としての物忘れ」と「脳機能の低下による物忘れ」を区別するのが難しいのが難点です。
それでもすべての物忘れは脳機能の低下とは限らないということですね。