どうして人間は自然が好きなのか?

森林浴はメンタル改善の効果が大きいとはよく言われますが、「どうして人間は自然が好きなのか?」という問題についてはまだ未知なところが多いです。

自然のなかで気分がリフレッシュする感覚は誰れもが経験していると思いますが、こういう感情がうまれるのはどうしてか?という疑問です。

そこで、2020年に出た研究(ソース)は「自然は人間の根本的な欲求を満たすのではないか?」という結論になっています。

ここでいう「人間の根本欲求」というのは、

  1. 自律性 =自分で自分のことを決めたい!という欲求
  2. 有能さ=自分の能力を高めたり、その能力を認められたい!という欲求
  3. 関係性=他者と良い関係を結びたい!という欲求

の3つで、つまり、ロチェスター大学心理学教授である、エドワード・L. デシの「自己決定理論」が提唱する3つの軸を使ったということです。

これらの欲求を自然が満たしてくれるのでは?というのは、おもしろい仮説ではないかと思います。

この研究は、

  1. 南アパラチアの自然地域を訪れたことのあるアメリカ人795人が対象
  2. 自分がもっとも気に入った自然エリアを思い浮かべてもらい、その場所への愛着レベルを尋ねる(「その場所に強い帰属意識を感じている」「自分との強いつながりを感じる」みたいな文章に賛成できるかどうかをチェックしました)
  3. さらに、そのエリアが「自律性」「有能さ」「関係性」のニーズを満たしているかどうかも尋ねる(「自分の好きなエリアには、好きなやり方で自由に訪れることができる」「自然のなかでいろいろな人と交流できる」みたいな文章に賛成できるかどうかをチェックしました)

という感じで「自然と欲求」の関係を調べました。

結果、以下のような傾向が見られたということです。

  • 好きな自然が「3つの欲求」をよく満たすほど、その自然への愛着レベルも高まる
  • 「3つの欲求」により、その自然への愛着度の約半分を説明できる

自然には自己決定理論の欲求を満たすパワーががあるのではないかということで、

研究チームによれば、

” 人々が自然を重視するのは、その空間が、他者とのつながりを感じたり、能力を感じたり、行動の選択における自律性を求めたりする心理的なニーズを支えているからである”

とのことです。

つまり、

  1. 自律性=自然のなかで遊んだり、食事をしたり、ただ休んだりで、自分の好きなことを好きなようにできる
  2. 有能さ=「ハイキングする」や「自炊する」などの自分で決めたチャレンジをこなすことで有能さを実感できる
  3. 関係性=たいていの人は大事な人と自然に出向き、チャレンジングな行動をともにするため、関係性が深まる

ということで、自然には人間の3大欲求を満たしやすい環境が用意されてると考えられています。

ちなみに、このなかでもっとも自然への愛着と相関してたのは「自律性」だったそうです。

現代人の休息に自律性が必要というのはよく言われているので、自律性が一番関係しているのは納得ですね。

この研究の注意点としては、

  • この調査はある一点の傾向を見たスナップショットでしかないので、自然への愛着と心理的ニーズの因果関係はよくわからない
  • 自然の効果については「自然の中を歩くとネガティブ思考がおさまる」(ソース)「自然音で注意が最適化される」(ソース)というデータもあるので、そのポイントも押さえておきたい

などがあげられます。

以上のことから、「自然への愛には自律性が大事」というのは、相関関係が高そうなので、たとえば森林浴に出かけるときなどは、もっと自律性が高まるアクティビティをやってみるのも良いかと思います。

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