「学習に無関係なおもしろさ」というのは「勉強の内容とは関係ないけど勉強の興味を引くために使われる楽しげなもの」のことです。
専門的には「誘引性付加物(Seductive Details)」などと呼ばれています。 いくつか実際の例を挙げてみると、
- 「過去のインターネット環境はどんなもんだったか?」を伝える授業で、その当時に人気があった映画スターの写真を学生に見せる
- 子供用の学習テキストに、アニメ調のキャラが楽しそうに勉強してるイラストを添える
- 「雷はどのように発生するか?」を説明したテキストに、雷に打たれたサッカー選手のユニフォームの写真を掲載などのことで、どれも一瞬だけ楽しそうと思わせるけれど、実際の学習内容とは関係ないのがポイントです。
「無関係な面白さは勉強の成果を下げる!」というメタ分析(ソース)が出ていて、上記のような勉強の興味をひくために使われる学習内容とは関係ない面白いものは残念ながら効果はないという結果です。
このようなやり方に効果があるのか?というのは昔からよく議論されていて、
- 賛成派:無関係なものでもとにかく学生の興味を引くのが大事である
- 反対派:学習そのものをおもしろくするように努力する方が大事だ
といったあたりで賛否両論がわかれてます。
このメタ分析では「誘引性付加物」に関する先行研究から58件を抜き出し、7500人以上の学生を対象にしたデータをチェックしました。
果たして「無関係なおもしろさ」は役に立つのか?ということをしっかり調べてくれています。
で、結論は、
誘引性付加物を使って授業をすると、そうでない授業を受けた生徒よりも成績が下がる!
ということで、
残念ながら、「無駄ななおもしろさ」で生徒のモチベーションが上がることはなく、逆に学習には悪影響が出てしまうということですね。
悪影響のレベルはだいたい「小~中程度」ぐらいで、思ったより悪い感じです。
では、どうして「無関係なおもしろさ」が逆効果になるのかというと、
- 認知的負荷が高まる:無関係な情報のせいでワーキングメモリがいっぱいになり、本当に大事な情報を処理する余裕がなくなる
- スキーマの干渉:無関係な情報が割り込んでくるせいで、頭のなかに正しいメンタルモデルができなくなり、知識の整理が邪魔される
というのが二大要因だと考えられています。無関係な情報で頭が混乱してしまうわけです。
これはあくまで「無関係なおもしろさ」の話であって、「関係あるおもしろさ」の場合は、勉強には大きなメリットがあります。
内容そのものがおもしろいと学習のモチベーションが上がるってデータはいろいろあり、
- 学習内容と関係がある限り
という感じです。
おもしろさと内容の一貫性が大事であるということですね。
勉強だけに限らず仕事でも言葉だけで説明するより図を描いたりするほうが内容が頭に残りやすいというのは経験的によくわかります。
会議で関係ない面白いことで場を和ませても会議の内容がちゃんと理解されたかどうかはその後の会議の進行次第かもしれません。
場を和ませる面白いことは内容に関係することが良いってことですね。