人間の体は微生物のかたまりです。
腸内細菌はもちろんのこと、肌や内臓といったあらゆるエリアに住み着いて、複雑なエコシステムを作り上げています(ソース)。
これは近年になって研究が進んだ分野なので、エコシステムの全容はわかってないのですが、人類が微生物たちと協同で免疫システムを作ってきたのは間違いないようです(ソース1,ソース2)。
また、この協同作業の歴史は遺伝子にも書き込まれていて(ソース1,ソース2)、もはや人間は微生物の助けがないと正常に機能しないことが分かっているのです。
微生物は人間の旧友
この仮説は2003年ごろから提唱されたもので、一般に「旧友仮説」などと呼びます(ソース1,ソース2)。「アレルギーの原因は殺菌のし過ぎが原因だ!」と主張する「衛生仮説」の考え方を、さらに広げたわけです。
私たちは、昔ながらの仲間をどんどん殺菌しすぎるし、まともな食物繊維もあげないしで、微生物たちから見放されてしまい、さまざまな病気が引き起こされてしまっています。
で、微生物をちゃんと扱ってないことで起きる不調として、
- アレルギー
- うつ病、不安症、ADHDなど
- 肥満
- 糖尿病
- 慢性疲労
- 心疾患
- 肌荒れ
などがあげられます。
腸内細菌のエキスパートであるグラハム・ロック博士によれば、
” 先進国における現代病の増加は、免疫システムが上手く働かないせいで起きている。
この不調は、人類の進化の過程で免疫システムを作り上げてきた私たちの旧友である微生物に日常的に触れていないのが原因である。
旧友たちのいくつかは、すでに現代の都市環境から完全に駆除されている。”
とのことです(ソース)。
微生物の乱れは、リーキーガット(腸管がバリア機能を果たせなくなり、腸がもれもれになっている状態)を経由して体内の慢性炎症(体に異変が起きたときに、免疫が自分を守ろうとする働きが慢性化し自分の体を傷つけてしまう)を引き起こすので、結果として万病のもとになってしまいます。
微生物の多様性が重要
狩猟採集民たちに関しては、2010年ごろから研究が進んで(ソース)、現代人とはくらべものにならないほど腸内細菌の種類が多いことが分かっています。
タンザニアのハッツァ族と都市生活者の腸内をくらべた2014年のネイチャー論文(ソース)によれば、ハッツァ族の腸内は、
- 食物繊維を分解する細菌が先進国の人間にくらべてとても多い
- 悪玉菌として扱われてるトレポネーマ属の細菌が多い
- 逆に善玉と呼ばれるビフィズス菌は少なかった
という感じだったそうです。
善玉悪玉に関係なく種類が多いほど良いということですね。
微生物と上手くやっていくためには?
以上の話から、
現代では旧友である微生物と触れ合う機会が少なすぎる
衛生グッズや抗生物質など、旧友を駆除するアイテムが多すぎる
ことが問題ですね。
具体的な対策としては、
- とにかく発酵食品をとる。伝統的な食生活では発酵食品が大きな役割を果たしているので重要です(ソース)。ぬか漬け、納豆、キムチ、ザワークラウトなどがおすすめめ。
- チーズ・ヨーグルトは無殺菌のみ。腸内細菌の権威であるティム・スペクター博士によれば、殺菌処理されたチーズやヨーグルトはジャンクフードと同じだそうで、無殺菌のチーズは腸内細菌の多様性をあげるのに最強となるとのことです。
- シンバイオティクスを心がける(プロバイオティクス=腸内細菌とプレバイオティクス=腸内細菌のエサ)
- 新鮮で必要以上に洗っていない野菜を食べる。
- 積極的に庭いじりやガーデニングをする。山や海に出かける。
- 抗菌グッズや殺菌グッズは使わない。
- よほどのことがない限り抗生物質は使わない。
- ペットを飼うか、動物と触れ合う機会を作る。
- アレルギーやお通じの不調がない人と積極的に付き合う(細菌は人間から人間へ簡単に移動する)。
- つねに部屋の換気はよくしておく。
- プロバイオティクスのサプリは、臨床試験が行われたハイクオリティなものを使う。(幅広い種類の酪酸菌や乳酸菌が入っていて、腸内に定着しやすいProbiotic3がおすすめ)
ということで微生物と上手くつきあって殺さないよう気を付けましょう。