そもそも塩のとり過ぎが良くないというのは常識で、昔から高血圧や心疾患の原因になると、言われ続けてきました。
が、ここ数年はさらに「塩分はやばい」というデータが増えてきて、
2015年の研究(ソース)は、ミュンヘン大学などのチームが行ったものです。
国際宇宙ステーションを模した閉鎖環境で実験
この研究がおもしろいのは、「マーズ520」という、将来の火星有人探査のために作られたロシアの実験場で、国際宇宙ステーションに似た環境で8カ月ほど暮らして様子をみるための施設を使って実験しているところです。
「マーズ520」での被験者は6人で、30日から60日ごとに違う塩分量で過ごしてもらっいました。
従来の調査は、アンケート調査から塩の摂取量を推定したものが多いので、そのへんは信頼感がなかったのですが、この実験は参加人数は少ないものの、特殊な環境で条件をコントロールできるので、非常に信頼性は高いと言えます。
1日12gの塩分で体内の老化スピードが激増
この実験では、1日の塩の摂取量を3パターンで調整していて、
- 6g
- 9g
- 12g
という感じで過ごしてもらいました。そのうえで参加者の血液を調べたところ、
- 1日12gの塩分を摂ったら免疫細胞の数が激増!
- 逆に1日6gにしたら炎症性サイトカイン(IL-6とかIL-23とか)が激減!
- さらに、塩分を減らすほど抗炎症作用があるIL-10が増加!
という違いが出たそうです。
つまり、塩を減らせば減らすほど炎症が減ったわけですね。
炎症については、昨日記事を書いているので参照してみてください。炎症が慢性的になると、あらゆる病気の元になります。
塩分の摂りすぎはアレルギー体質も悪化
いまの日本人は男性が平均で1日11.3g、女性が9.6gの塩分を摂ってたりします。
この実験に照らせば、大半の人は塩の摂りすぎで体が老化してる可能性があります。
これはたった6人の実験ですが、WHOなども「塩分は1日5gまで!」と言ってるので、減塩を心がけたほうがいいのは間違いなさそうです。
さらに、塩分と炎症の関係については、2016年にクリーブランド クリニックがレビュー論文(ソース) を出していて、研究者によれば、
” 塩分を摂りすぎると、マクロファージ(M2)の活性が妨げられる。M2には組織の炎症をやわらげる機能があり、傷の治りを促進する働きがある。
また、塩分の摂りすぎはIFNγ の産生を増やすため、Tレグの働きが損なわれてしまう。これらの現象が重なって、塩分が多い状況では炎症が進むことになる。”
ということです。Tレグは、免疫の暴走を防ぐ人体システムのひとつで、つまり、アレルギー体質の人にもとくに塩分はよくないってことです。
人体は塩分に対応できていない
狩猟採集民の調査(ソース)によると、大半の部族では1日の塩分量は1g以下で、まったく塩を摂らない日も珍しくないそうです。
人類がこんなに塩を摂るようになったのは最近のことなので、遺伝子が対応してないのかもしれません。
塩は大事なミネラルなので、まったく摂らないのも問題ですが、とりあえず日本人は塩分が多いので減らすことを考えるのがよさそうです。
とりあえず、塩分の多い加工食品を減らすことを心がけてみたらよさそうです。
また、外食が多い場合は、まず1日10gは超えてしまいがちなので、そのときはせめて野菜を大量に食べてカリウムの摂取量を増やすのが良いと思います。