運動で頭がよくなるという記事は以前書いていますが、
運動を続けると長期的に頭が良くなるだけでなく、ランニングやサイクリングをした直後から脳のパフォーマンスが上がるという証拠は多くあります。
必ずしも実感できるレベルではないかもしれませんが、再現性はとても高いです。
ですが、未解決の問題も多くあって、
- どのくらいの運動量でこの効果を引き出すことができるのか?
- 逆に脳の機能が下がってしまう運動量はないのか?
- 個人の体格は関係あるのか?
- どのような種類の認知が改善するのか?
などのポイントはまだよくわかっていません。
特に「運動しすぎたら逆効果ではないのか?」問題はあまり検証が進んでないので、気になるところです。
シドニー大学などの2021年のテスト(ソース)では、上記の問題にある程度の答えを出そうとしてくれています。
この研究では、トレーニングを受けた21名のサイクリストまたはトライアスリート(男性11人、女性10人)を集めて、以下のトレーニングを2日に分けて行ってます。
- 中程度のサイクリングを15分間+約4分間の認知機能テスト
- 1に続けて中程度のサイクリングを30分間+約4分間の認知機能テスト
- 2に続けて疲労困憊するまでのサイクリングを平均11~12分間+約4分間の認知機能テスト
中程度のサイクリングはピークパワーの50〜55%でスタートし、15分後には最大心拍数の平均75%、45分後には80%になるように設定しました。
つまり、少しずつ運動の負荷と長さを上げていって、それぞれの認知レベルをみたわけです。かなりハードなテストです。
ちなみに、認知テストは、
- スクリーン上に4つの黒い箱が表示され、そのうちの1つが赤くなるたびに、その箱に対応するボタンをできるだけ早く押す(脳の反応時間をチェックしてる)
- 一連の単語(赤、緑、青、黒)がランダムな色(赤、緑、青、黒)で表示され、言葉の意味ではなく文字の色に対応するボタンを押す(いわゆるストループテストで、脳の瞬間的な反応にストップをかける能力をチェックする)
みたいになってます。
認知テストとしては定番のものが選ばれてます。
で、結論は、
- すべてのケースにおいて、45分の運動の方が15分よりも優れていた
- 従来は「完全に疲労困憊した後は脳の機能が下がる」と言われていたが、今回のテストではそのような結果は認められなかった
- ちなみに、この効果にプラセボはほぼ関係なく、運動による脳への血流の増加や神経伝達物質の増加が原因であることが確認された
となっています。
基本的には普通に会話ができないレベルの運動を45分行うほうが、認知の機能は上がるみたいです。
ただ、この研究はあくまですでに体力がとてもある人だけを対象にしてるんでご注意が必要です。
2015年に台湾の研究者が行った研究(ソース)だと、ほとんど運動をしていない学生で計測した場合は、
- 頭を良くするには20分間の適度な運動がベスト!
- 45分間の運動だとそこそこの効果しか得られない
みたいな報告も出ています。
あまり心肺機能が高くない人は、20分ぐらいの運動に抑えといたほうが良いようですね。
ということで普段運動をしていて心肺機能が高い人は45分の運動を、そうでない人は20分ほどの運動をするのが良いということになります。