「肉を食べないとメンタルが悪化するのでは?」という考え方は、いくつかの観察研究で報告されてきた話です(ソース)。
ですが、この説については不明なことも多く、他方では「ベジタリアンでもメンタルには問題ない!」みたいな報告も多少出てたりします。
が、そこで2021年に行われたメタ分析(ソース)は、「肉の摂取はメンタルに良いのか?」をしっかり調べた内容になっていて、過去に出た類似の報告よりも信頼がおけそうです。
このメタ分析は、「肉を食べる人と食べない人のメンタル」について調べた先行研究から20件を選択し、肉を食べる人15万7778人と、肉を食べない人1万3259人を対象にしてます。
そのうち8件の研究は米国または北米の人で、11件は米国以外の国( ヨーロッパ、アジア、オセアニア)となっていて、参加者の年齢は11~105歳までと幅広いです。
また、データの質は全体的に悪くなく、質が高いと判断されたものが3つ、中程度の品質と判断されたのが6つとのことです。
従来の研究よりも全体の質は高いし、分析の方法も厳密になっています。
では、分析の結果をまとめると、以下のようになります。
- 肉を食べる人よりも、肉を食べない人の方がうつ病のレベルが高った(g = 0.216)
- 肉を食べる人は、肉を食べない場合と比べて、うつ病( g = 0.216)および不安(g = 0.17)に苦しむ率が下がる傾向があった
- ベジタリアンと比べて、肉を食べる人は、ゆううつ感(g = 0.26)と不安感(g = 0.158)の両方が低かった
- 上述の傾向は、性別には関係がなかった
- 「肉を食べるとメンタルが改善する」という傾向は、研究の質が高ければ高いほど大きくなり、一貫性があることが示された
だったそうです。
数値を見ると、全体的な違いは「ごくわずか」なので、「肉を食べてメンタル改善できる」というわけではないですが、なんらかの差はありそうだと言えますね。
「どうして過去の研究とは食い違いがあるのか?」ということが気になりますが、この問題について研究チームは、
”研究の厳密さと質が、一貫性のない知見の最大の原因だと思われる。”
とのことです。
つまり、ベジタリアンとメンタルの関係を調べた研究は、以下の問題があったようです。
- 参加者の自己報告でメンタルを調べたデータが多く、医師が診断したデータが意外と少ない
- 食事のパターンも自己申告で、本当に肉を食べていないのかもよく分からない
そのせいで分析の結果がぶれてきて、「肉を食べなくても問題ない」って結論が出るケースも増えたらしいです。
上述のとおり質が高いデータほど「肉は食べたほうがいい」という方向性にはなってるので、肉の摂取は必要かなと思います。
ちなみに、このメタ分析では、「どうしてベジタリアンでメンタルが悪化するのか?」という点までは掘り下げてないのですが、過去に出てきた仮説によれば、
- 植物性エストロゲンの過剰摂取につながるからでは?
- 十分なオメガ3脂肪酸を摂取できないからでは?
- 肉にふくまれるビタミンB12が摂取できないからでは?
といった点が有力ではないかと言われています。