亜鉛にはうつ病で脳の細胞が死ぬのを食い止める働きがあり、ストレスによるダメー ジをおさえる働きがあるという記事を以前書いていますが、
亜鉛は免疫系がちゃんと働くために不可欠で、通常の摂取の量が不足すると、免疫反応の低下につながる可能性があります。
ですが、亜鉛サプリが免疫の働きにどこまで役立つかは謎が多く、複数の研究で様々な結果が出ていることに加え、調査の対象になった免疫マーカーの数が多いので、亜鉛のサプリが免疫機能にどんな影響を及ぼすのかを調べるのは難しいようです。
そこで、2022年に出たデータ(ソース)は、亜鉛サプリが免疫機能に及ぼす働きを調べた35件をまとめたものになっていて、役に立つのではないかと思います。
この分析は、1981年から2020年の間に発表された文献のなかから、18歳から100歳の参加者を対象にしたRCT(ランダム化比較試験)を選択して、
全部で、1995人を対象にしていて、アメリカから中国まで、色々な国で行われたデータをまとめてます。
実験の期間は1.5週間から72週間にわたっていて、硫酸塩、グルコン酸塩、酢酸塩、グリシン形の亜鉛を1日5から44ミリグラムほど使用していて、
そのうえで、CD4、IL-6、CRP、TNF-αなどの免疫系マーカーがどう変わったかを調べています。
結果は、
- 多くの免疫マーカーは、亜鉛サプリによって明確な影響を受けなかったが、好中球、(hs-)CRP、IL-6、TNF-αがわずかに減少した。
- 亜鉛のサプリにより、CRP、hs-CRP、好中球、TNF-α、IL-6が有意に減少した。
- 亜鉛のサプリは、CRP、IL-6、TNF-αを有意に減少させた(つまり、体内の炎症レベルが減少して、いろんな病気の可能性が減った)
となっていて、著しい変化が出ているわけではないのですが、免疫系は活性化している感じです。
ちなみに、他のポイントとしては、
- ヘルパーT細胞の数と働きを示す大事なマーカーの増加は有意ではなかったものの、亜鉛が足りない人の場合は、1日50mg以上の亜鉛を8週間以上飲み続けると、顕著な変化が見られた。
- また、亜鉛が不足している人が亜鉛を補給すると、CD4値が上昇した(つまり、亜鉛によってヘルパーT細胞の働きが回復した可能性がある)
みたいな点があります。
これをもって「亜鉛は絶対必要」とは言えないし、あくまで「亜鉛が足りない人なら効果が出る」という話です。
普段の食事で亜鉛が足りてる人にはあまり影響はない感じですね。
研究チームもいくつかのポイントを指摘しいて、
- 体内の炎症を減らすには、亜鉛サプリの投与量と形態が重要
- 亜鉛は、トローチやシロップの形で摂取し、一時的に口やのどに付着させることで、風邪の症状の重症度と持続時間を減少させる可能性がある
- 同じように、RCTのメタ分析やプール分析では、亜鉛を口から飲むことで呼吸器の感染症の発症率を下げ、インフルエンザに伴う症状の期間を短縮し、回復を助けることが示されている。
- メタ分析における投与量は、1週間あたり20㎎から1日あたり92㎎の範囲
みたいになってます。
これらの知見をもとに、まとめると、
- 亜鉛のサプリは免疫系の機能を改善し、ヘルパーT細胞を増やし、炎症を減らしてくれる可能性がある
- 亜鉛の補給は、特に亜鉛が不足している人ほど、免疫力を高めるのに役立ち、一般的な炎症を抑える可能性がある
ということで、体内の亜鉛が足りない人は、意識的に亜鉛の摂取を心がけていくのがおすすめです。
最後に、亜鉛の基本的なポイントとして、
- 1日の推奨摂取量(RDA)は、19歳以上の成人である場合は、男性で1日11 mg、女性で1日8 mgです。許容上限は1日40mgですが、長期間大量に亜鉛サプリを使用すると、今度は銅や鉄分の働きを妨げる可能性もあるので注意が必要です(特に亜鉛を摂りすぎると、銅が体内に吸収されにくくなる)
- 米の国立衛生研究所によれば、風邪の対策に使うなら、トローチやシロップを使用するのが良いとのことです。これは、ウイルスの侵入口である鼻や口に亜鉛を付着させるためです
ただ、亜鉛サプリの最適な投与量、製剤、期間についてはまだよくわからないことが多いので、自分の健康状態に合わせて取り入れたいところです。