認知行動療法は、
ものの見方を変えてストレスを減らしていく治療法のことです。
例えば、
仕事で失敗すると、「私はダメな人間だ」といった考え方が自動的に浮かんで気持ちが落ち込む時、
そこで「『私はダメな人間だ』という思考が浮かんだ」と考えて自分を客観視し、「誰でも失敗はある」という現実的な考え方に切り替えるといった手順で進んでいく、シンプルな手法です。
で、認知行動療法が不眠に効くのがなぜかと言えば、ざっくり「眠れないのは考え方の歪み」が原因であるケースがよくあるからです。
「ここのところずっと眠れてないから今日も眠れないだろうな」とか「いつも体は疲れてるのに眠れないんだよな」とか、そういった思い込みに取りつかれてしまい、そのせいでいよいよ眠れなくなってしまうようなパターンです。
2022年に出た研究(ソース)も「認知行動療法が不眠にどこまで効くのか?」という点を掘り下げていて参考になると思います。
これは、2012年に発表された6週間のRCTにもとづく縦断的研究で、不眠症と診断された133人(平均年齢48歳)を集めて、
- 認知行動療法を不眠症に使う方法が書かれた本を渡して、6週間ほどトレーニングする
- 認知行動療法を不眠症に使う方法が書かれた本を渡し、さらにガイド付きセラピストのサポートをつけて、6週間ほどトレーニングする
って2つのグループに分けました。
ちなみに、米国精神医学会の定義によると、不眠症は「少なくとも3ヶ月間、週に3晩以上、睡眠を開始または維持できず、その結果、日中の機能不全に陥る状態」だそうです。
また、なんの治療もしないと不眠症は持続しやすいことも分かっていて、1年から10年ほど患者さんを追跡したコホート研究では、31~74%の症例で不眠症が長期にわたって残存するそうです。
不眠症って、なかなか難しい症状なんですね。
さて、今回の研究では、電話による面接と自己報告式の質問票を使って、治療後1年と10年で参加者たどうなったかを追跡調査しました。
認知行動療法と不眠の長期的な効果を調べたものは少ないので、10年後の様子まで調べてくれてるのはすばらしいです。
その上で、参加者の不眠の症状や睡眠薬の量がどう変わったかと言うと、
- ベースライン(6週間の介入を行う前)と比べて、治療後1年および10年目にも不眠症の重症度が改善された
- セラピストのガイドがなしグループと比べた場合、ガイド付きグループは治療後1年目に不眠症状がさらに軽減していたが、治療後10年目ではグループ間の差はなかった
- ベースラインと比較して、6週間のトレーニングが終わったあとに約66%の参加者が不眠症が改善し、これは治療後1年と10年でも維持された
- さらに、睡眠薬を「定期的または頻繁に使用する」と答えた参加者の数は、ベースラインと比較して治療後1年で半分に減少したが、治療後10年では差がなかった
とのことです。
いったん認知行動療法のトレーニングを行えば、10年が過ぎても不眠の改善効果は得られるってのはすばらしいす。
認知行動療法は、割と身につけやすい考え方なので、効果が持続しやすいのかもしれません。
もし現時点で不眠に悩んでるのなら、認知行動療法を試してみても良いと思います。
より体系だった知識を知りたい場合は、
- 認知行動療法で改善する不眠症(かなり一番簡単に読めて使いやすい)
- 不眠症に対する認知行動療法マニュアル(やや専門的、困っている人には役立つはず)
- ベッドにいてはいけない―不眠のあなたが変わる認知行動療法 (著者が不眠体験者なので、痒いところに手が届く)
などをご参照してみてください。
認知行動療法の考え方そのものは難しくないので、とりあえず知っておいても損はないと思います。