運動すると頭が良くなるというのは、科学的によく知られたことですが、どんな運動をすれば、脳の働きが改善するのでしょうか?
2019年の「運動と脳」に関する論文(ソース)によると、HIITのように高負荷で短時間の運動が、脳の構造を良い方向へ変えてくれて、脳の働きがよくなるということが確認されています。
研究チームによると、
”定期的な有酸素運動が脳に良いことはすでに知られており、記憶力や注意力、学習能力の向上などをもたらす。
しかし、なぜ運動がそこまで有益なのか、そしてベストな運動、強度、持続時間はどのようなものか?という点についてはまだ研究の必要がある。”
ということで、ここでは過去に行われた「有酸素運動と脳の神経可塑性」に関する研究から8つの文献を選んで内容をまとめた系統的レビューです。
データ数は少ないですが、参考になる内容と言えます。
「神経可塑性(しんけいかそせい)」というのは、脳のシナプス結合が様々な経験のおかげで増加したり減少することを意味しています。
具体的には、
- 新しいスキルを学ぶ
- まったく知らない場所に行く
- 未知の仕事につく
のように、とにかく新しい体験をすると、その状況に適応するために脳の配線が変化します。
ですから、神経可塑性が高ければ高いほど人生で起きるトラブルにも対応しやすくなって、うまく毎日を生き抜くためには欠かせない要素だと言えます。
またこの研究で効果がチェックされたエクササイズの種類は、
- 筋トレはふくまない
- 基本的に有酸素運動がメインで、中程度の負荷を続けるタイプの運動(ランニングとか)から、HIITのような高負荷運動をふくむ
- エクササイズ中の被験者の心拍数は最大値の50% 〜 90%に分布している
となっています。
様々な負荷の有酸素運動が、脳の可塑性にどう影響するのかを調べた訳です。
結果は、
- HIITを20分間やるか、中等度の有酸素運動を25分間ほど続けた後に、もっとも神経可塑性が変化していた!
ということでした。
さらに、もうひとつ面白いことは、
- 有酸素運動で神経可塑性が変化するのは、ストレスホルモンのコルチゾールが減るのが主要な原因だと考えられる
だったそうです。
運動が脳に良い理由はいろいろと言われていて、「BDNF(脳神経や機能の発達をうながすタンパク質)が大事なのでは?」とか「乳酸がポイントでは?」のような諸説あるのですが、神経可塑性についてはコルチゾールが大事であるということが分かったということです。
研究チームのよれば、
”血中のコルチゾール濃度が高いと、神経可塑性反応を阻害する可能性がある。HIITを行う際はセッション中にテンポを変えることで、コルチゾールレベルをベースラインレベルに戻すことができるだろう。”
ということです。
基本的にエクササイズはコルチゾールを減らす方向に働きますが、やりすぎると逆にストレスホルモンが増えてしまうので注意する必要があります。
ストレスが脳に良くないのはよく知られている(ソース)ことなのででそこまでの驚きはありませんが、やはりコルチゾールの量には注意しないといけないと思います。