ダイエットで定番の糖質制限の話ですが、パンや白米は食欲をアップさせるから、逆に炭水化物を減らせば食欲も自然に抑えられて、ダイエットに有効といった考え方です。
果たしてこれは正しいのか?というのがポイントです。
「炭水化物を減らすと食欲は減るのか?」ということですね。
取り上げるのはコロンビア大学などの研究(R)で、長年糖質制限ダイエットを調べているケビン ・ホール博士の実験です。
参加者は30歳前後の男女20人で、平均のBMIは 27.8ぐらいです。全員を2つのグループに分けて、2パターンの食事法に割り当てています。
- 動物ベースの低炭水化物食 :脂肪75%、糖質10%、タンパク質15%
- 植物ベースの低脂肪食 : 脂肪10%、糖質75%、タンパク質15%
これらの食事をランダムに2週間ずつ続けてもらい、どちらが最終的な摂取カロリーが多かったか?を調べています。
調査にあたっては、参加者を28日間にわたって日常生活から離れラボで隔離されていて、チームが用意した食事をとるという、かなり厳密な内容になっております。
どちらの食事法も三大栄養素のバランスが固定されているだけで、食べる量は自由です。
それぞれの食事内容の例は、低炭水化物食だと、肉がたくさん入った野菜たっぷりのサラダで、低脂肪食は、さつまいもとブロッコリーのサルサなどとなっています。
大まかな結果は、
- 第1週目の総摂取カロリーは、低脂肪食のほうが低炭水化物食に比べて1日平均689kcalほど少なかった
- 2週目の総摂取カロリー量を比べた場合も低脂肪食の方が低炭水化物食より1日平均544kcalほど少なかった
ということで、500〜700kcalも差があって、やはり糖質は食べた方が満腹感がありそうな感じです。
詳細な部分は、
- 低炭水化物食はちゃんとケトン体が増えていた(一説にはケトン体が増えれば食欲が抑制されるとも言われてる)
- 参加者の主観的な満腹感や好みを比べた場合、2つの食事に差はなかった(つまり、食事の好みによってカロリー量が左右されたとは考えづらい)
- 体重はどちらの食事でも減少したが、低炭水化物食は最初の1週間で急速に体重が減り、2週間後には-1.77 kgになっていた。一方で低脂肪食の体重減少は-1.09 kgだった(低炭水化物食で体重が減ってるのは、グリコーゲンがなくなって水分減少したため)
- 低脂肪食は肉が少ない分だけ微量栄養素が不足する傾向が見られた(B12、D3、オメガ3、鉄分などの不足が目立った。カルシウムと亜鉛も足りない可能性がある)
という結果になっています。
とりあえず、食事を変えてから最初の2週間に限っては、いくらケトン体が増えても食欲が抑えられる可能性は低そうな感じです。
「体が低糖質に慣れるまでは数週間が必要である」という主張もあるので、2週間を超えて続けたらまた違う結果が出る可能性はあります。
低脂肪食も低糖質食も1年以上すると減量の効果は変わらないという研究結果もあるので、ケトン食に目立ったメリットが出るとは考えにくいです。
以上のことから、今回の結果をまとめると、
- 肉が多い低糖質食は2週間ぐらいで止めるとカロリーが過多でやばい
- 野菜中心で肉を食べない低脂肪食は、かなり気をつけないとビタミンやミネラルが不足しやすい
みたいな感じです。
どちらも一長一短という感じなので、「肉はほどほどに野菜を多めに食べるタイプの食事」がいいのではないかと思います。
何事もやりすぎは良くないのかもしれませんね。