「海外で自分探し」とか言うと大丈夫なのかと心配されそうですが、「意外と正しい」という面白い研究(ソース)が2018年に出ています。
これはライス大学の実験で、「海外に出ると本当に自分が見つかりやすくなる!」という問題に取り組んだものです。
研究者によれば、
”私たちは自分の祖国の文化で育つにつれて「常識」を学び、自らの考え方や行動を左右される。
そのため、もし生まれた国しか知らないと、自分の思考や行動に影響する信念が、本当のコアバリューと一致したものなのかに疑問を持たなくなり、確かめようともしなくなってしまう。
ところが海外に住むと、自己を調査する機会があらゆるところに存在する。”
とのことです。
違う文化に触れると強く自分を意識することになるので、結果として自己分析が進むのではないかということですね。
海外でセルフコンセプトクラリティが高くなる
この研究は、まずひとつ目の実験では296人の男女をオンラインで集めて、次のようなアンケートに答えてもらいました。
- 「自分がどのような人間か?」という問題に対して明確な感覚を持っていますか?
- いくつかある自分のパーソナリティ同士が衝突を起こすことはありますか?
これらの質門の意図は、専門的には「セルフコンセプトクラリティ」と呼ばれています。
この論文の定義では、
自分に対する信念が明確で、自身を持って定義でき、時間が過ぎても一貫して安定している状態。
という感じです。
ざっくり言えば、自分をよく理解し、自分自身に安心できているような状態のことです。
過去の研究では、この「セルフコンセプトクラリティ」が高い人ほど幸福だし創造性は高いし決断力はあるしで、いろいろと人生がうまくいくようです。
さて、研究の結果ははっきりしていて、海外で暮らした期間が長い人ほど「セルフコンセプトクラリティが高い!」というものです。
この傾向は年令や性別を調整した後でも確認されたそうです。
セルフコンセプトクラリティが高いと良いことだらけ
さらにもうひとつの実験では、MBAの学生551人を対象にアンケートを行い、まずは全員に「自分で決断力やコミュニケーション能力はどれぐらいあると思うか?」と質門しました。
さらにその友人たちにも協力してもらい、「参加者の決断力やコミュニケーション能力はどれぐらいあると思うか?」という点を調査しました。
要するに、自己の採点と他者からの採点が一致している人ほど「セルフコンセプトクラリティが高い」と判断できるわけです。
その結果はやはり同じで、海外に住む経験が長い人ほどセルフコンセプトクラリティが高く、自分の長所と短所をしっかり把握してたそうです。
さらには、海外暮らしが長い人は、
- 人生の満足度があがる
- ストレスレベルが下がる
- 仕事の生産性が上がる
- 人生の目的が見つかりやすくなる
という傾向もあったとのことで、良いことだらけです。
海外に行った回数より期間が大事
研究者によれば、
”海外で暮らす時間が長くなるほど、自分について考える時間が増える。
結果、自分への理解が深まるチャンスが生まれ、意思決定も明確になっていく。”
とのことです。
ちなみに、ここで大事なのは「海外に行った回数」ではなくて「海外で暮らした期間」ということです。
つまり、5つの異国で2年ずつ暮らすよりも、ひとつの異国で10年暮らしたほうがメリットは大きいってことですね。
ちょっと海外旅行に行っただけでは「自分探し」には難しいけれど、ちゃんと異国の地に身をうずめるぐらいの覚悟なら心理的なメリットはかなり大きいという感じです。
海外移住までいかずとも、外国旅行に行くだけでも創造性が上がるってデータもあるので、知らない土地に行くだけでもなんらかの効果はありそうです。