炎症は万病のもと
炎症は、体に異変が起きたときに、免疫が自分を守ろうとする働きのことです。
火傷をしたところ腫れ上がったり、切り傷が赤くなったりするのは、体が治療のためにがんばっている現象です。
ただし、火傷や切り傷のような短時間の炎症ならいいのですが、これが長期にわたる慢性的な炎症になると話が変わってきます。
その代表的な例が内臓脂肪で、小腸に脂肪がたまると、体は懸命になって免疫細胞を動かしはじめ、これが全身に炎症を引き起こす原因になります。
つまり、内臓脂肪はつねに山火事のような状態ということです。
軽度の炎症で脳の働きがスローになる!
バーミンガム大学などの研究(ソース)によると、
科学者たちは、長い間にわたって炎症と認知との関連性を疑ってきましたが、その原因と影響の関係を明確にはできてませんでしたが、今回の研究は、炎症によってはっきりと影響を受ける脳内のプロセスを特定できました。
ということです。
これまでも「炎症が脳の働きを下げるのでは?」って報告はありましたが、ついに明確な証拠が出てきたということですね。
この実験研究は、
軽度の炎症を引き起こす物質を参加者に注射する、
いろんな認知テストを受けてもらいつつ、EEGで脳の活動をチェック、
などを行いました。
プラシーボ群も作って、こちらには炎症が起きないニセの注射をしたとのことです。
参加者の炎症レベルはインターロイキン6の量でチェックしました。
結果は、
軽度の炎症が起きた参加者は、脳の視覚的注意の働きが低下し、
脳波を調べたら、炎症グループはアルファ波(注意に関連)とシータ波(実行機能に関連)も変化していた
ということです。つまり「軽度の炎症で脳の働きがスローになった」というわけです。
研究チームによれば、
これらの結果は、脳ネットワークの特定のエリアが炎症の影響を受けていることを明らかにし、これはブレインフォッグの原因なのかもしれない。
とのことです。
ブレインフォッグとは、頭にいつも霧がかかったような状態になることで、その原因は軽度の炎症にあるのではないか、ということです。
この実験だけだと、まだ脳の他のエリアにどれだけの影響があるかはわからないものの、ぜひ注意しておきたいことです。
次の研究は、ハーバード大学医学大学院などのデータ(ソース)で、結論から言うと、
CRPという炎症マーカーが高い人は、どうにも認知機能のパフォーマンスが低いのでは?
という相関を示した研究です。
具体的には、寛解期(気分が安定した状態)にある双極性障害の方々を対象に、サンプル数は222人です。さらにメンタルが健康な52人をコントロール群にしてあります。
実験の内容は、
MCCBという定番の認知テストを行い、全員の情報の処理スピード、注意力、ワーキングメモリ、問題解決力などをチェックし、
血液検査でCRPを測り、炎症レベルが高いグループ(5 mg/L以上)と低いグループ(5 mg/L以下)で、体内の炎症と認知テストのスコアをくらべる
ということになっています。
炎症レベルの高さは脳機能にどれだけの影響をおよぼすのかをチェックしたわけです。
結果は、
広範囲にわたるテストにより、CRPは認識機能に統計的に有意な影響をあたえることが分かりました。
CRPが5mg/L以上の被験者は、実行機能、情報の処理スピード、推論の能力、問題解決の能力といった指標において、CRPが低いグループよりもパフォーマンスが低い傾向が見られた。
睡眠不足、運動不足、日々の食事など、認知低下をもたらす原因は無数に存在する。
が、それと同時に、炎症も重要な要因になるという証拠が多く出てきた。
ということです。
まとめると、
「頭をよくしたかったら炎症を抑えよう!」という説がいよいよ正しくなってきた感じです。