昔から肉は「大腸がんの原因である」や「肉はガンの発症率を上げる」という主張が多く見られていて、肉バッシングの大きな根拠のひとつになっています。
肉好きには気になるところですね。
おおまかな統計データを見ると、1999年と2012年に行われた大規模な調査で、どちらも過去に行われた「ベジタリアンの発がん率」に関する研究をまとめて再分析したものですが、(ソース1,ソース2) データ数は7万から10万人分で結構な量があります。
その結果は、食い違っていて、
- 1999年論文:ベジタリアンと肉を食べる人の間では、胃がん、大腸がん、肺がんなどの死亡率に差はなかった
- 2012年論文:肉を食べる人よりもベジタリアンのほうが、発がん率は18%ほど低かった
となっています。
2012年論文のほうが新しくてデータ数も多いので、まずは「肉食と発がん率には関連があるのでは?」と考えた方がよさそうです。
ただし、ここで重要なのは肉の種類です。
加工肉には全体の死亡率を高くする傾向があるので、これは発がん率にも当てはまるのではないかと考えられます。
この問題については、統計データが多くあって、ポイントを抜き出すと、
- 魚と鶏肉は、大腸がん、前立腺がん、乳がん、大腸がんの発症率を低くする(ソース1,ソース2,ソース3,ソース4,ソース5)
- ただし、鶏肉には腎臓がんの発症率を高める傾向がある(ソース)
- レッドミート(牛肉や羊肉)と加工肉には、わずかながら全体的な発がん率を高める傾向がある(ソース1,ソース2)。特に大腸がんのリスクが上昇しやすい
という傾向が見られます。
これはあくまで観察研究なので、これだけで「牛肉や加工肉はがんになりやすい」という結論にはならないのですが、人間を使って実験できるテーマでもないので、以上のデータから危険性を推測していくしかない感じです。
どうしてレッドミートと加工肉が発がん率が高いの?
どうしてレッドミートと加工肉で発がん率が高くなるのかというと、以下5つの原因が考えられています。
1. 肉を焼くとヘテロサイクリックアミンが出る
肉を高温で焼いたり揚げると、ヘテロサイクリックアミンという発がん物質が作られます(ソース)。
これは、あらゆるタイプのガンの原因になることがわかっていて(ソース)、可能な限り肉は低温で調理するのがベストです。これはレッドミートや加工肉に限らず、魚や鶏肉でも同じなので注意が必要です。
2.レッドミートに豊富なヘム鉄が大腸がんのリスクを増やしていく
牛肉や豚肉には鉄分が豊富で、これは良いことですが、いっぽうでは活性酸素を運んで腸内の上皮細胞にダメージをあたえることが知られています。その結果、大腸がんを起こしやすくなるということです(ソース)。
3.タンパク質がIGF-1ホルモンの分泌を増大させる
IGF-1は、タンパク質をとると分泌されるホルモンで、細胞の分裂をうながす役割を持っています。基本的には悪玉ではないですが、分泌量が増えすぎると、悪性腫瘍の細胞を増やす原因になってしまいます(ソース)。
ですが、IGF-1と発がん率についてはまだ不確かな面が多くて、いちおう牛乳を飲み過ぎると前立腺がんが増えるというデータ(ソース)がありますが、全体的なガンのリスクを増やすかどうかは議論がわかれています。
4.加工肉に使われる保存料が発がん性をあげる
加工肉の多くには亜硝酸塩(肉の発色をよくするための保存料)が使われていて、加熱すると肉のアミノ酸とむすびついてニトロソアミンという発がん物質を作り出します(ソース)。
ニトロソアミンには、おもに消化器官のガンを増やす傾向があります(ソース)。
5.レッドミートのNeu5Gcが発がん性をあげる
Neu5Gcは人間の体内では作られず、牛肉や豚肉などにふくまれる物質の1つです。
これが体内に入ると、人間の免疫系が「敵が侵入してきた」と勘違いして大量の抗体を作りだします(ソース)。
その結果、全身に炎症が起きて、ガンが成長してくということです。ガンの原因の1つとして有力視されつつある物質です。
以上の話から、
- やっぱり魚はベスト
- 発がん性では鶏肉が2番目
- 牛、豚、羊と加工肉は、やや発がん性を高める
- 肉のガンリスクを減らすには低温調理がベスト
ということが言えます。
肉と発がん性については否定はできませんが、世界中の長寿者は肉を食べているし、あくまで「食べ過ぎと高温調理はよくない」と考えるのが良いかもしれません。
レッドミートにはオメガ3脂肪酸が多いという利点もあるので、全体のバランスを考えていろいろな肉を食べるのが良いと思います。